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社員に「空気読ませる」のはNG テレワーク時代に求められるマネジメントとは?“ゆるいマネジメント”からの脱却へ(4/4 ページ)

» 2022年05月30日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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脱・出社一択時代に求められるマネジメントとは?

 1つ目は、業務指示が明確であることです。あうんの呼吸に任せて曖昧な指示を出してしまうと、日々顔を合わせることが少なく察する力が弱い社員は混乱します。誰が・何を・いつまでに・どのように対応するかを明確にして、社員が管理職のすぐ目の前にいても、テレワークしていても、常に迷いなく仕事に没頭できる環境を整える必要があります。

 次に、自律自走の仕事スタイルを基本にすることです。以前書いた「なぜ、7割超の日本企業は『五輪・緊急事態』でもテレワークできなかったのか 」の中でも指摘した通り、これまでの日本の職場は、社員が管理職の目の前にいて、都度、状況を見て業務を割り振ったり指示を出したりして仕事を回す他律的マネジメントを基本にしてきました。それはチームの統制を取る上では有効な手法の一つであり、指示が曖昧な“ゆるいマネジメント”をしたとしても、すぐに異変に気付きやすく修正がかけられる利点があります。

社員が自走自立できる環境づくりが必須(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 しかし、脱・出社一択時代に形成される出社&テレワーク混在型チームを指揮する際には、どうしても目が行き届かない範囲が出てしまうため他律的マネジメントは上手く機能しません。管理職は取り組むべき仕事を明確にした上で、社員に仕事完遂の責任と権限を持たせ、自律自走できる環境を整える必要があります。

 3つ目は、進捗状況をこまめに確認することです。社員の行動をすべて目で追うことはできないため、日次、週次など短いスパンでマイルストーン(中間目標)を設定するなどして、進捗をこまめに確認できる環境を整える必要があります。こまめに進捗を確認することで、最終目標とのズレが大きくなってしまう前に、早め早めに軌道修正することが可能になります。

 テレワーク機会の増加だけでなく、残業の上限規制や有休取得の義務化なども日々の職場で顔を突き合わせる機会を減少させていきます。また、ハラスメント防止でコミュニケーションの取り方にこれまで以上に配慮する必要があったり、ダイバーシティ&インクルージョンの推進によって多様な社員が集うことなども考慮してチームマネジメントしなければなりません。チームを取り巻く環境も、チーム自体の性質も、変わりつつあるのです。

 それなのに、いつまでも「あうんの呼吸」に依存して統制の隙間を埋めるようなマネジメントを続けようとしても、構造的に維持できるはずありません。脱・出社一択時代へと移り変わる中で会社が取り組まなければならないことは、社員に空気を読んだ越権を求め続けるのではなく、会社側が時流を読んでスタイルを転換し、“ゆるいマネジメント”からいち早く脱却することなのです。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ4万人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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