両者とも当然ながらユーザーの獲得コスト、維持コストはかかっているもの、楽天モバイルが全国に店舗を拡大する一方で、povo2.0はオンライン専用という違いもある。申込みもサポートもオンラインのみとすることで、コストを抑えているのだ。また楽天モバイルには前述したローミング費用の支払いがあるが、povo2.0にはそのような負担もない。
なお、このローミング費用は楽天モバイルにとって相当な負担だったようで、三木谷社長は事あるごとに「ローミング費が高い」とこぼしていた。少しでも早く自前ネットワークを広げてローミングを解除すべく、楽天市場で陣頭指揮を執っていた矢澤俊介現楽天モバイル社長のもと、急ピッチで基地局の整備を推し進めてきた。
20年3月に4738局だった基地局は22年4月末時点で4万4000局超まで拡大。人口カバー率は目標から約4年前倒して97.2%を達成している。だが、この設備投資も当初の想定通りにはいっていない。
楽天モバイルは独自開発の仮想化技術で、基地局などの設備に汎用のハードウェアを用いてコストを削減した「完全仮想化ネットワーク」を構築している。そのため設備投資額は当初約6000億円と、従来と比べてかなり少ない想定がされていた。しかしこれが大きく上振れし、すでに1兆円規模を超える想定になっている。
一方で同社は、この技術を海外へ輸出することにも注力している。今年設立した新会社楽天シンフォニーが手がけるこの事業が、軌道に乗れば「黒字化できる」というのが、三木谷社長が繰り返し語ってきた構想だ。
実際に米大手AT&Tとの協業など、事業は順調に進んでいるようにも見えるが時間がかかる。目標として掲げる「23年単月黒字化」を実現するには、無料キャンペーンの該当期間がすべて終了するこのタイミングで、0円を廃止せざるを得なかったのだろう。
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