テレビCM、屋外の看板広告、駅でのサンプリング活動など大々的な宣伝活動だけで十分に商品が売れる時代ではなくなってきた。インターネットによってビジネスチャンスが広がり、必ずしも資金力がある企業だけがヒット商品やロングセラー商品を作り出せるわけではなくなったことが背景にある。
特に、テレビCMで認知を高め、店頭で目立たせ、サンプリングなどで顧客の購買ハードルを下げるといったマスマーケティングを主とした企業は苦しんでいるだろう。同様の戦略を展開してきた花王も例外ではない。
同社は「売って終わり」のビジネスから転換を図るためにDXに力を入れることに。2021年1月にDX戦略推進センターを新設した。同センターの下には「売って終わり」から「もう一度買ってもらう」を実現するためにカスタマーサクセス部を設置。マス向け商品を展開する企業でカスタマーサクセス部はどのような取り組みをしているのか?
「縦軸で考えるのはブランド事業部の仕事。DX戦略推進センターでは数十に上るブランドを横軸で考えている」と話すのは、花王DX戦略推進センター カスタマーサクセス部の鈴木直樹部長。さまざまなブランド事業部のリテンションビジネスをデジタル技術で支援するのがDX戦略推進センターの仕事だ。
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、消費者の購買行動はECにシフトしつつある。カテゴリやブランドによって異なるものの、店頭販売が主だった花王としては、D2Cを展開しないと厳しい状況になっている。そこでDX戦略推進センターが着手したのが、直販チャネルの開拓・強化とUX(顧客体験)のためのデジタルツールやアプリケーションの開発・導入推進だ。
鈴木氏は「アマゾンや楽天といった通販サイトでも花王製品を販売しているものの、それらを購入した顧客の情報は基本通販サイトに帰属する。それでは継続的に購入してもらうためにどのような要素が必要かの情報が不十分。顧客による商品レビューなどを参考にする程度になってしまい、カスタマーサクセスの実現につながらない。また通販サイト経由では各ブランドが伝えたいメッセージが顧客に届かない」と言う。
「花王製品を使い続けてもらうためには、カスタマーサクセスを提供し、ブランドの思いに共感してもらうことが重要。そのためにはマスメディアだけでは伝達しきれない製品開発に込めた想いなどを届けるコミュニケーションをやらないと駄目だと考えた」(鈴木氏)
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