攻める総務

喫煙所に代わる社内コミュニティ「井戸端会議」の場をどう作るのか?総務のための「オフィス」再考(2/4 ページ)

» 2022年06月09日 07時00分 公開
[金英範ITmedia]
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(1)そこに大義名分があれば行く

(2)「サボっている」と思われない安心感があれば行く

 つまり「この場所で休憩していいですよ」といっても「人は行かない」ということです。タバコは、煙やニオイなどで人に迷惑をかけたくないからといえば、十分な大義名分になり得ます。一般に「サボっている」とは人は思いません。

 以前、ある会社で総務だったとき、社内の喫煙者を調査し、その行動パターンを分析したことがあります。なんと1日平均で10分×10回=100分という時間を使っていました。「あの人は、しょちゅうタバコを吸いに席を立つ」と揶揄(やゆ)されていても、仕方ないという“大義名分”があり、おとがめなしでした。

 ただ、昔ほど喫煙所が社内コミュニティーとして機能しなくなってきているようです。一般的なオフィスワーカーの喫煙率は、総務・人事部で社外・社内の調査をすると、30%だった時代から20%、最近では平均10%前後になっている──という事実があります(もちろん業態によって異なります)。

 さらに、もともと男性主体だった“喫煙所コミュニティー必要論”が、昨今のダイバーシティー経営の観点で、説得力が落ちているとも考えられます。

 誤解のないように説明すると、筆者は喫煙所自体は否定していません。私は喫煙者ではないですが、喫煙者は尊重します。他人に迷惑をかけず、さらっと喫煙できる仕掛け(分煙ブースなど)があればよいですし、喫煙者の生産性向上(集中力・能力の向上)につながるならば、それは会社としても重要なことだと思います。

 工場など大きな敷地を持ちながら「喫煙所廃止」という方針をトップダウンで決めてしまい、数百人もいる喫煙者が15分も歩いて、敷地外にあるコンビニの前にたむろして喫煙し、近隣に迷惑をかける──というケースも考えられます。社員の生産性向上、CSR、会社のブランドの観点ではマイナスです。

 きちんと喫煙者の母数とニーズを調査した上で、ルールを明確にし、敷地内にきちんとした喫煙所を確保してあげるのが、総務の役割だと思っています。全社員を受け入れるダイバーシティーという観点では重要です。LGBTは受け入れられるのに、喫煙者を受け入れない(どちらも同じくらい優秀な人でも)というのでは、差別(蔑視)になります。

 ただ、筆者が言いたいことは「喫煙所=コミュニティーの場」という認識と計画が昔のようにはできないということです。

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