攻める総務

喫煙所に代わる社内コミュニティ「井戸端会議」の場をどう作るのか?総務のための「オフィス」再考(4/4 ページ)

» 2022年06月09日 07時00分 公開
[金英範ITmedia]
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 社内にカフェや食堂がある企業は、既に存在している水の補給源をうまく活用してコミュニティー形成の場をつくるのも定番となってきました。また、複合機や文房具ステーションの近くの席を数席撤去して、空いた場所にコーヒーメーカーなどを入れてあげるだけでも、社員の間で話題となり、ちょっとした井戸端会議が始まります。午後3時前後に食べられるデリバリーのスイーツ、新鮮なフルーツなど、リラックス効果のある食べ物を提供するのもいいでしょう。昨今の健康経営の文脈では“大義名分”になり得ます。

 また、少し空間に余裕が作れるならマッサージ器具を用意したり、音楽を流したり、香りを工夫したりするのもよいです。これらのソフトなサービスをぜいたくではなく、社員コミュニケーション活性化のために必要なサービスとして、社内稟議(りんぎ)を経て実現してあげれば、社員にとっては有り難く、立派な大義名分が生まれます。そうすると井戸端会議が自然に発生し、もはや「サボっている」とは誰も思いません。安心感が自然と根付くことになるでしょう。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 よくあるケースとして、喫煙所を廃止し、その場所に休憩コーナーを設置することがありますが、筆者はあまりおすすめしません。それは喫煙者を排除する印象を与えます。その場所に非喫煙者が集うのは、ある意味“侵略”を連想させ、社員間の調和も難しくなると経験的に感じます。喫煙所は移設という処置をとりましょう。喫煙所があった場所には、喫煙者も含めて皆が使える、新しいリラックスできる仕掛けを考える──そのくらいの配慮が必要だと思います。

 総務として「予算がない」は言い訳になりません。過去の連載でも紹介した通り、こうした予算は、総務の“サイフ”の再整理によって作り出すことができます。重要なのはお金をどこに使うかという発想と決断、社員への愛、そして実行力です。今後、総務のサイフの優先順位は、社員へのホスピタリティを高めるサービス、コミュニティー形成のための場、エンゲージメントを向上させる仕組み──などに向かっていくと筆者は信じています。

著者紹介:金英範

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 株式会社 Hite & Co.代表取締役社長。「総務から社員を元気に、会社を元気に!」がモットー。25年以上に渡り、日系・外資系大企業の計7社にて総務・ファシリティマネジメントを実務経験してきた“総務プロ”。

 インハウス業務とサービスプロバイダーの両方の立場から、企業の不動産戦略や社員働き方変化に伴うオフィス変革&再構築を主軸に、独自のイノベーティブな手法でファシリティコストの大幅な削減と同時に社員サービスの向上など、スタートアップから大企業まで幅広く実践してきた。

 JFMAやコアネットなどの業界団体でのリーダーシップ、企業総務部への戦略コンサルティングの実績も持つ。Master of Corporate Real Estate(MCR)認定ファシリティマネジャー、一級建築士の資格を保有。


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