三井住友カードらのstera transitは、決済ネットワークをstera、国際ブランドでVisa、交通機関の決済・認証クラウドサービスとしてQUADRAC「Q-move」を採用している。この仕組みは当初から変わっておらず、機能的にもあまり変化はない。
多くは実証実験中で、しかもコロナ禍でインバウンド需要が壊滅したことで、検証が足りていない交通事業者も多い。実験期間を延長した事業者もあり、今後のインバウンド回復に伴って、改めてインバウンドに対する効果が測定できるだろう。
最大の課題がこの点で、とにかくインバウンドが回復しないと需要と使い勝手の検証が正しく行えない。各事業者とも、インバウンドだけでなく日本人の利用にも期待しているが、交通系IC利用者の移行というよりも、これまで交通系ICを使わなかった人の現金からの移行が期待されている。
課題としては定期券や1日乗車券などの企画切符の扱いがある。現時点で、クレジットカードのタッチ決済で定期券はサポートされておらず、都度課金が基本だ。英ロンドンのように、1日の上限金額を決めて地下鉄・バスの乗車金額が上限になるとそれ以上は課金されないという上限キャップ制もあるが、現時点で国内ではそうした料金設定はされていない。
そのため、1〜数日の周遊チケットのような企画チケットも現状では存在していない。一部ではQRコードなどを使ったモバイルチケットを提供する事業者もあるが、クレジットカードのタッチで済めば実現が簡単なのは間違いない。
海外に比べて日本は鉄道会社同士の相互乗り入れが一般的で、これも問題になる。一方の路線がクレジットカードのタッチ決済に対応していても、乗り入れ先が非対応だと出場でトラブルになるからだ。
南海電鉄と泉北高速鉄道線は、タッチ決済の乗車で乗り継ぎ割引がある。南海電鉄と南海フェリーでは、1日の間に鉄道とフェリーの双方に乗車すると、フェリー料金だけで鉄道に乗車できる乗り継ぎ機能に対応。こうした乗り入れ、乗り継ぎの対応も必要となる。
1つの路線内で対応駅と非対応駅が混在する場合も問題で、全駅への拡大、乗り入れ路線への拡大までは時間が掛かるだろう。ただし、こうした課題は交通系ICでも過去に通った道であり、実証実験で必要という結論になったときに、いかに拡大を早められるかがカギとなる。
現状、どうしても交通系ICとクレジットカードのタッチ決済でリーダーが別々になる点も課題だ。技術的には可能だが、規格の問題もあり、技術だけの問題ではない、というのがQUADRACの説明。また、スマホに複数のカードを設定している場合にどれを優先するかなど、解決しなければならない課題もあり、当面は交通系ICとクレジットカードリーダーが併置される形になるだろう。
これからインバウンドの回復も予想されており、国のキャッシュレス化推進の施策もあるため、今後も同様に新たな導入を目指す交通事業者が続くことが予測される。クレジットカード対応がどの程度の効果を発揮するか、各事業者の検証結果が注目されるところだ。
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