日産SAKURAに補助金100万円? 期待の軽BEVを潰す、無策な補助金行政池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2022年06月20日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 日産「SAKURA」と三菱自動車の「eKクロスEV」は、両社の合弁で設立された「NMKV」で設計された双子のクルマだ。今最も期待される軽BEV(バッテリー電気自動車)であり、台数については後述するが、すでに予約注文が殺到している。

 他の先進諸国と比べ、日本ではBEVはあまり普及していない。そこで手頃な価格の軽自動車にBEVが加われば、一気にBEVの普及が進むことが期待されていた。

日産の軽BEV「SAKURA」。発表から3週間で1万1000台の受注となった

軽自動車はBEVに向いている

 そもそも国内の新車販売の4割は軽自動車と台数が多く、普及に弾みを付けるにはもってこいだ。しかも用途としてもそうそう長距離では使われない軽自動車はBEVに向いている。

 航続距離を伸ばそうとすれば、バッテリー搭載量を増やさねばならず、現在車両価格の4割とも5割ともいわれるバッテリーの搭載量が増えれば、庶民の手が届く価格にはならない。最初から航続距離を見切って、バッテリー搭載量を削って軽BEVを設計すれば、リーズナブルなBEVが可能になるのではないかという点でも期待を集めていた。

 そうした期待に応えるために、NMKVは既存の内燃機関軽自動車のシャシーを流用し、併せて日産リーフに搭載されているパウチ型のバッテリーを使って軽BEVを設計した。既存のパーツを可能な限り使う。全てはコストダウンのためだ。搭載自由度の高いパウチ型バッテリーを生かして、シート下などのデッドスペースをうまく活用することで、SAKURAとeKクロスEVを可能な限りローコストで成立させた。ちなみにSAKURAが下は239万9100から上は294万300円。eKクロスEVが下は239万8000円から、上は293万2600円となっている。

SAKURAのバッテリー構成

 例によってこの記事はバイヤーズガイドではなく、ビジネスの話にフォーカスするので、煩雑さを避けるため、以後SAKURAを例に挙げて話を進めるが、基本的にはeKクロスEVでも同じである。

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