攻める総務

テクノロジーが人の仕事を奪う世界で、総務に仕事は残るのか?「総務」から会社を変える(2/2 ページ)

» 2022年06月23日 07時00分 公開
[豊田健一ITmedia]
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課題とツールの結び付け

 課題が可視化されたところで、次に必要となるのは、その解決手法の検討です。新たな仕事として解決手法を創造し、それを標準化することで、システムやテクノロジー・ツールに置き換え、あるいは、BPOを進めていきます。インハウスの従業員がその仕事を持ち続けないことが大事です。持ち続けてしまうと、課題の発見に手が回らなくなります。

 近年リスキリングといって、プログラミングなど新たなスキル獲得のための学び直しが注目されています。総務において新たに必要とされるスキルは、先に記した課題発掘と、その課題を既に世にあるツールやサービスとどのように結び付けるか、というスキルでしょう。実際に課題ツールを作成する必要はないと思います。

 となると、積極的に新たな技術や、新技術を用いたツールやサービスに関する情報収集が重要です。数多く行われている展示会やフェアに出向き、最新のサービス情報を収集しておきます。見えてきた課題に対して、どのツールやサービスが使えるかを検討する接続能力が、総務がリスキリングで身に付けるべき能力ではないでしょうか。

ファースト・ペンギン、ファースト・ユーザー

 新たなツールを導入する際に心掛けたいのは、まず総務がファースト・ペンギンならぬファースト・ユーザーとなることです。氷山に多数のペンギンがいて、ある1匹が海に飛び込むと、それにつられて一斉にペンギンが海に飛び込む──そんな映像を見たことがあるかもしれません。この最初に飛び込んでいくペンギンがファースト・ペンギンです。

 総務こそ意を決して、最初に使うファースト・ユーザーになるべきなのです。使ってみて初めて見えること、言えることもあるでしょう。また、現場は使ったこともない総務から使えと言われても納得できないでしょうし、説得力も感じられません。現在は、さまざまなサービスに無料のトライアル期間が設定されているケースが多いです。まずは総務が使ってみて、その経験から現場に導入を進めていくのです。

 さらに重要なマインドは、変化を恐れない、ということです。ファースト・ユーザーが持つべきは、変化に向かって進む勇気です。とかく人は変化を嫌います。慣れた方法の方が、間違わないし楽だからです。

 現状を理想の姿に変えることは、そもそも大きな変化です。変化を恐れていては、何も進化せず、現状維持の管理総務のままです。その管理総務はほぼ全領域BPOが可能です。となると、戦略総務に総務自身が変化しない限り、存在意義が失われてしまいます。

 記事の冒頭では、「戦略総務に必要なスキルとは」というテーマから始めました。しかし、最も重要なのはスキルではなく、こうした「変化を恐れず、むしろ楽しむマインドセット」なのかもしれません。

著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)

株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長

早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)『マンガでやさしくわかる総務の仕事』『経営を強くする戦略総務』


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