【独占取材】ソフトバンクビジョンファンドはなぜLegalForceに出資したのか(4/5 ページ)

» 2022年06月23日 11時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

AI契約審査サービスについての懸念

――規制リスクについてお考えを教えて下さい。先日、経産省のグレーゾーン解消制度を用いた問い合わせに対し、AI契約審査サービスについて法務省から「違法と評価される可能性がある」という回答がありました。こちらに関してのお考えと事業リスクについて、見解をお聞かせください。

角田 6月6日の法務省の見解には、匿名の問い合わせに対して「本件サービスは違法と評価される可能性がある」と書いてあります。読んでいただければ分かるとおり、「AI契約審査サービス一般」について「違法と評価される可能性がある」と述べているわけではなく、あくまで「本件サービスは違法と評価され得る」としか述べていない、というのが、正確な理解です。

 その上で、法務省の6月6日付の回答をひも解いていくと、結局は、個別のサービスごとに、(弁護士以外の法律事務の取り扱いを禁止した)弁護士法72条の法解釈と法適用を丁寧に行っていくということに帰着します。最終的には弁護士法72条の法解釈と法適用の権能は裁判所、つまり検察庁が弁護士法違反で起訴をして刑事裁判手続に付された上で、裁判によって証拠をもって認定されるまで決まりません。法務省の「本件サービスは違法と評価され得る」との回答は、仮に「本件サービス」が弁護士法72条違反の罪で刑事裁判に付された場合、本件サービスは裁判所によって違法と評価される可能性があると言っているということです。

 したがって法務省自体は、本件サービスの適法性自体についても結局は確定的な結論を出していないというのが正しい見方だと思います。ましてや、AI契約審査サービス一般については何も言っていません。そのため法務省の6月6日付の回答自体は、当社のサービスに直接的な影響を与えるものではないと考えています。

 ただ、6月6日付の見解の中で、弁護士法72条とAI契約審査サービスについて、法務省としてどのように解釈しているかの一端が説明されています。その規範部分はもちろん非常に参考になるのですが、この解釈を前提にしたとしても、弊社のサービスの適法性は特段影響を受けないと考えています。

 一部、法規制とイノベーションの議論も見られなくはないですが、私個人としては、弁護士法72条がイノベーションを阻害しているとは全く思っていなくて、既存の法体系だったり積み重ねられた判例や法理論の枠内で、弁護士法第72条の法解釈の枠内で適法にサービスを設計できると考えています。弁護士法第72条は、さまざまな歴史的背景のもとに、数十年にわたり、その解釈論について議論が積み重ねられてきた非常に歴史のある条文です。新しいテクノロジーと積み重ねられた法体系の整合性をとっていく、そのような法解釈を提案していくのも私たち事業者の責任ではないかと考えています。

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