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パソナの淡路島移転計画はどうなっている? 家族で引っ越した社員が語ったリアルな日常長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2022年07月02日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

都会へのアクセスが良好

 パソナグループでは08年から淡路島で、「人材誘致」による地方創生にチャレンジしている。同社の南部代表は兵庫県神戸市の出身。1995年阪神・淡路大震災の後には、南部氏は神戸の復興に取り組んだ。南部氏の資産管理会社が大株主になって、西武百貨店が撤退した後の神戸ハーバーランドで商業施設「神戸ハーバーサーカス」を運営していたこともあった。この施設は5年間で5万人の雇用創出を目指す、「神戸復興プロジェクト」の一環であった。

 過疎化が進む淡路島の活性化に本気で取り組むきっかけは、神戸の対岸にあるこの地を活性化させたいと南部代表が考えたことだ。ちなみに淡路島北部は、大震災の震源地で大きな被害を受けた地域である。

 淡路島になじみのない人にとっては、辺鄙(へんぴ)な離島と思われるかもしれない。しかし、2つの本四連絡橋で神戸、徳島県鳴門市と結ばれていて、神戸淡路鳴門自動車道を車で走っていると、一続きの陸地に感じられる。公共交通なら路線バスで、淡路インターから明石海峡の対岸、高速舞子まではわずか7分だ。バスと電車を乗り継いで、神戸の中心・三宮までは約40分、大阪のキタの中心・梅田までは約60分でアクセスが可能だ。

 都会まで意外と近いのも魅力で、距離感としては関東ならば三浦半島の先端部、外房あたりを想像してもらえると良いかもしれない。

社員の働きぶりは?

 社員の淡路島での実際の仕事ぶりが見学できるというので、淡路市内のオフィス「パソナワーケーションハブ鵜崎」を訪問した。淡路市内には同社のオフィスがいくつか分散している。淡路夢舞台のオフィス以外は、20年9月以降に移住してくる社員の受け入れのため開設したものだ。

 こちらのワーケーションハブは、大阪湾に面していて、オーシャンビューが素晴らしい。社員たちは特に決まった自分の席はなくて、カフェのような感じで、思い思いの席に座ってPCを開いて仕事に没頭している。

ワーケーション風景

 服装も全般にカジュアル。特別なゲストと会う時や重要な会議以外は、スーツを着ることもないようだ。

 同所で、パソナのセールスサポート部長、寺岡明晃氏に淡路島での仕事と生活のスタイルを聞いた。

 セールスサポート部は21年4月に発足した新しい部署。寺岡氏は東京のオフィスでそれまでは営業部長をしていた。10月にいよいよ本格的に稼働する段階で、寺岡氏は家族と淡路島に移住する決断をした。パソナが淡路島に本社機能を移していく流れはもちろん知っていたので、新しいチャレンジをするチャンスと寺岡氏は受け止めた。

 部下は120人ほどいるが、ほとんどが現地雇用、つまり淡路島の住民だ。

 セールスサポート部の仕事は、全国のパソナの人材派遣、再就職支援など各部署の営業を支援することだ。パソナを使っていない会社に電話やメールで事業の内容を案内して、ニーズがないかを打診している。

 また、例えば求人サイトなどに書き込むフォーマットの文を、営業部から送られた簡単なメモ書きをもとにヒアリングして完成させるようなことも行う。これまでは、フォーマットを完成させるのは営業部員が行っていた仕事だが、かなりの負担になっていた。それなら、文をフォーマット通りに埋めるのはセールスサポート部に任せて、営業部員は次の営業に行った方が効率的だ。完成した文は、営業部員にフィードバックして、営業部員がチェックして提出する。

 寺岡氏は営業の仕事に手慣れているので、営業部員がサポートしてもらいたいポイントを熟知している。「このような仕事の内容ならば、東京に居る必要がなく淡路島でできる」と、寺岡氏は考えた。

 淡路島に移住してみて、寺岡氏の環境の変化で一番大きかったのは、家族と過ごせる時間が増えたことだ。これまで、1時間ほどかけて満員電車に揺られて通勤していたが、今は車で10分ほどと大幅に短縮されて体も楽になった。東京で働いていると、平日は子どもの顔をほとんど見ないで時間が過ぎていくのがストレスになっていた。

 同様な体験談を聞いて、パソナの社内では特に子育て世代で、淡路島移住に手を挙げる人が増えているという。

家族連れで楽しむ姿が見られる

 寺岡氏は広島県の山間部の出身で、ワンマン列車が無人駅を走っているような場所で育った。そこに比べれば、淡路島は総合病院もコンビニも深夜まで開いている。そして、ドラッグストアも近くにあって、都会的に見えるのだそうだ。

 このように、淡路島でのワーケーションは、子育て世代を中心に社員から選ばれているのが実情である。

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