富山県のTBS系ローカルテレビ局「チューリップテレビ」(富山県富山市)は7月1日、国のコロナ補助金を不正申請していたとして、約3500万円を国に返還すると発表した。同社は「報道機関として甘さがあった」と謝罪し、今後の社内調査で不正の全容解明を図るとともに、その結果と再発防止策を公表する方針を示している。
不正申請は、2020年11月から21年9月に同社が主催した計8件のイベントで確認された。このうち6件は、本来は主催者として申請手続きを行う必要があったが、申請資格のないイベント業者が代行し、共同主催者として申請していた。残る2件のイベントについては、チューリップテレビが主催者として申請していたものの、申請資格の要件となる中止公演について、費用を負担していないイベント業者も費用負担したかのように申請していたという。
不正申請の温床となったのが、コロナ禍で中止・延期を余儀なくされたイベント主催者向けに、その後実施するライブ公演の費用の一部を国が補助する「J-LOD Live」(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)という補助金だ。所管官庁の経済産業省は同社主催の8件のイベントに、総額3367万2000円の補助金を拠出していた。いずれも社内調査で不正が発覚。確認された事実について、経産省の補助金事務局に報告し、謝罪したという。
一連の不正について、同社は適切に申請した1件の補助金も含め、計3579万9000円を国に返金する方針。同社は「申請資格のないイベント業者名で申請したことは不適切で、報道機関としての認識に甘さがあったと言わざるを得ない。信頼を損なう事象を引き起こしたことについて、皆さまに深くおわびする」としている。
チューリップテレビは富山県のローカル局。TBS系列局として1990年に開局した。2016年には富山市議会の政務活動費の不正に関して、地道な調査報道を積み重ね、スクープ記事を連発。最終的に8カ月間で14人の市議を辞職に追い込んだ。
一連の報道が評価され、翌17年に日本記者クラブ特別賞、日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞、民間放送連盟優秀賞(テレビ番組報道部門)、菊池寛賞などを受賞。全国的に注目を集め、その内容は書籍化(『富山市議はなぜ14人も辞めたのか〜政務活動費の闇を追う〜』、岩波書店)された他、ドキュメンタリー映画『はりぼて』も制作された。
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