クルマが壊れる3つの原因 故障のパターンとこれからの自動車社会に起こる変化高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

» 2022年07月11日 14時30分 公開
[高根英幸ITmedia]

クルマが壊れる原因は大きく分けて3つある

 可動する部品が摩耗や金属疲労によって壊れてしまうことは、最も想像しやすい故障のパターンだろう。エンジンや変速機の内部では、さまざまな部品が動いている。潤滑や冷却が施されるものの、長年の使用で徐々に摩耗したり、折れて壊れてしまうことがある。

 プラスチック製の部品も熱や紫外線によって脆(もろ)くなり、折れたり割れたりするようになる。金属よりも軽量で低コストな反面、耐久性は金属にはかなわない。ゴムはさらに寿命が短くなる。しかし振動を吸収したり、圧力や荷重に耐えて支たりするゴムの持つ特性は、クルマにとって欠かせないものだ。

 サスペンションの可動部にはブッシュやボールジョイントが組み込まれており、走行中の衝撃を受け続ける。10年10万キロ程度は耐えることもあるが、走り方や環境によってはそれ以前に寿命を迎えることもある。ダンパーやスプリング、アッパーマウントだって同様だ。

 ブレーキパッドやタイヤなどの消耗品だけが消耗していくのではなく、動く部品はすべて消耗が避けられない。違うのは、どれくらいの期間を想定しているか、ということだけなのだ。

昔はオーバーホールによって、摩耗した部品を取り換え、再び機能を取り戻すことが一般的に行なわれてきたが、最近のクルマはリビルド業者がオーバーホールしたリビルド部品に交換することが一般的で、クルマを預かるディーラーや整備工場がその部品をオーバーホールする作業を行なうことは、ほとんどなくなっている。クルマの構造も自動車業界のシステムも変化しているのだ

 2つめは可動する部分はなく、内部の部品が破壊されることで故障するパターンだ。電子部品の破損がこれに相当する。

 これは個体差や使い方によっても寿命が大きく変わってくる。例えばエンジンに組み込まれるオルタネータ(交流発電機)は、ローターに発電のために電気を供給するブラシやローター軸受けのボールベアリングなどは機械的な摩耗によって寿命を迎えるが、それだけが故障の原因になるわけではない。

 発電した電気の電圧を調整するICレギュレーターなどの半導体部品は、壊れることも多いものの、その寿命は実にまちまちだ。サプライヤーによってはメンテナンスのしやすさからブラシとICレギュレーターを一体構造にして、管理を容易にしているブランドも存在する。

 ともあれ半導体を使っている以上、通電のショックにより壊れることもあり、寿命は予測できない。それでも熱や振動が多ければ、壊れやすくなる。クルマには50〜100個ほどのマイコンが使われているが、使用環境としてはかなりの劣悪条件なので、使い方によってクルマの寿命を縮めてしまうこともある。

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