――私は格闘技ファンなのですが、野球やサッカーのようにファンが増えていかないことにもどかしさを感じることもあります。なぜ格闘技は裾野が広がっていかないのでしょうか?
やっぱり、格闘技って競技化が進むことによって凄(すご)さや面白さが伝わりにくく、分かりづらくなるのかも知れません。格闘技に興味がない人が3分2ラウンドぐらいで飽きてしまうこともあると思いますし、いくらメインカードが豪華だったとしても、そこに至るまでのアンダーカード(前座)は苦行に感じるかもしれないですよね。
ボクシングやキックボクシングはプロレスのように派手な演出があるわけでもないですし。その点、BreakingDownは「1分1ラウンド」ですから拘束時間も短いし、ライト層にはちょうどいいのかもしれません。
昔からこの課題意識はありました。もしかすると、「ガチの試合なんて面白くない」っていう結論にたどりついた先人が、プロレスというショービジネスを作ったのかもしれないなと……。格闘技の源流はすごく昔からあったわけですからね。
――なるほど。しかし、エンタメ性を重視し過ぎると、かえってその演出に慣れてしまい、飽きられる可能性もありますよね。
それはご指摘の通りですね。BreakingDownも現在のフォーマットでやり続けたらそのうち飽きられるという課題感はあります。早ければあと1回ぐらいしか、このフォーマットはもたないのかもしれない。
でも、BreakingDownのテーマの1つに「人間讃歌」というものを置いています。人間性を否定せずに肯定するということです。私自身の哲学にも「人に対して期待しないし、絶望しない」というものがあります。人って利己的だし、聖人君子なんていないんですよ。でも、本当に悪魔みたいな邪悪な人もそうはいない。会社経営をしていると本当にいろいろな人に会います。
BreakingDownに出てくる人は尖(とが)っている人ばかり出てきますね。試合までに生きてきた人生をどうやって1分に突っ込んでいくか。そして試合後にどうなっていくのか。オーディションに参加して、試合があって、試合後のストーリーも全部ひっくるめて一つのパッケージなんですよね。
試合自体は素人の殴り合いだったりもするので、「BreakingDownはオーディションだけをずっとやっていてほしい」というコメントも多くいただきます。私はドキュメンタリーを作っているイメージなんです。
殴り合うという原始的な行為は感情移入しやすいでしょう。だからオーディションだけっていうのはあり得なくて、試合も試合後のストーリーも全部まとめて1つの作品なんですよね。
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