「パワハラは許さない」という社会の流れの中で、一方的に部下を責め続けるような典型的なパワハラは減ってきています。しかし、前編でご紹介したように、堂々と規則や命令に違反する部下などが現れると、上司が怒りを抑えきれずにパワハラにつながってしまうことはよくあります。
中編にあたる今回は、問題のある従業員へのパワハラ事例第2弾として、仕事への適性や能力に疑いがある従業員への対応について取り上げます。
X航空会社に有期限契約社員として入社したAさんは、客室乗務員として働き始めましたが、新人訓練中も、乗務に就いてからも、さまざまな問題点を指摘されました。仕事開始から半年後のチェックでは5段階中下から2番目のD評価を受け、上司のBさんから直接指導を受けることになりました。しかしAさんの仕事ぶりは改善せず、2年目の契約更新にあたり、部長から「業務への取り組み姿勢が弱く、努力を怠っている」などの評価を受け、「今後、3カ月を限度に経過観察期間と位置付け、改善が見られない限り、契約の終了もあり得ます」とする注意書きを受け取りました。
経過観察中、上司らはAさんの業務が改善するよう、工夫を凝らしてさまざまな指導を続けましたが、Aさんの問題は改善されず、Bさんはついに「本当にはっきり言うけど、もうお辞めいただきます」と1回目の退職勧奨をしました。
その後もAさんの仕事ぶりは改善せず、Aさんは自主退職の意向を1度示しましたが、その1カ月後には、書面にて、自ら退職する意思のないことを明らかにしました。
その後、Aさんは頼まれた仕事をやらずに「やった」と答えるなどの重大な問題行動を起こし、Bさんは面談の席で、長時間にわたり、「辞めていただくのが筋です」などと2度目の退職勧奨をしました。その4日後も再び面談し、「この仕事は、もう無理です。記憶障害であるとか、若年性認知症みたいな」などの言葉も出しながら、3度目の退職勧奨をしました。
それでも、Aさんは退職を拒絶し、この後、Bさんらからの退職勧奨は行われなくなり、Aさんは契約期限に伴い、雇止めされました。
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