利益倍増の琉球銀行、そのカラクリは?妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(4/8 ページ)

» 2022年07月28日 08時24分 公開
[妄想する決算ITmedia]

与信コスト40億円減少が利益増に

 では、売上面の不調が続く中で、どうしてこれほど利益面は好調だったのでしょうか?

 その要因は、与信コストが40億円も減少した状況となっているからだと分かります。

 ではどうしてこれだけ与信コストが減少したのかというと、20年度にフォワードルッキングな引き当てを導入し、21年度には一部事業者の元金返済再開や景気指標の回復などにより、与信コストの戻入があったためだとしています。

 分かりにくい用語が出てきたと思いますので、何が起きていたのかをざっくりと説明します。

 21年度には「コロナの影響で観光業は大打撃を受けているから、今後貸し倒れが増えそうだぞ」ということで「貸し倒れを予測して先にその分の損失を計上しよう」と動きました。

 では22年3月期になって実際はどうだったのかというと、先ほど見たように政府や金融機関からの積極的な支援によって企業の倒産は落ち着いた状況となりました。なので「想定より貸し倒れが増えないぞ」という状況になります。そのため、過剰に出してしまった損失を取り消すために、その過剰な分を22年3月期の利益にしましたよ、ということで22年3月期は利益が増えたわけです。

 数字でいえば、21年3月期には「今後は貸倒で30億円損失が出そうだから30億円の損を先に出しておこう」としたものの、22年3月期には「どうやら貸倒は10億円で済みそうになったから20億円利益を出しておこう」みたいなことが起きたわけです。30億円の損失と20億円の利益が相殺されて、2年間の合計だと適切な10億円の損失になるよって話です。

 つまり前期の業績悪化も、今期の業績回復もコロナの特殊要因が大きいということです。21年3月期と22年3月期の経常利益を合計すると117.7億円ですから、これを2年間でならすと58.8億円ほどになります。

 コロナ以前の19年3月期の経常利益は61.0億円だったことを考えると、利益面ではほぼコロナ前と同水準だと考えてよさそうです。

 観光業を中心とする沖縄経済自体は大きな悪影響を受けたものの、行政からの支援もあり企業の倒産状況は落ち着いていましたから、経済が悪化する中でも銀行の業績に大きな悪影響が出ていたわけではないということですね。

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