変革の財務経理

インボイスネットワークに勝機 Sansanが請求書管理Bill Oneで目指す戦略とは(3/4 ページ)

» 2022年08月02日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

インフォマートと何が違う?

 Bill Oneはインボイスネットワークを拡大した先に、どんな未来を描いているのか。一つ想像されるのは、インボイスネットワークへの参加を通じて、企業同士を囲い込んでいくことだ。

 結局のところ、請求書のやりとりの課題は、各社がバラバラのフォーマットを使い、紙やメール、電子データなどバラバラのプロトコルでデータをやり取りするところにある。ほとんどの会社がBill Oneを使い、同じフォーマットでBill Oneシステムで電子的に請求書の送受信をするなら、企業にとっても便利なだけでなく、Sansanにとって囲い込みのツールとして非常に強力だ。

 実は似たような仕組みは、インフォマートが「BtoBプラットフォーム」という名称ですでに実現している。請求書だけでなく、商談や受発注、見積もりなど数多くの企業間の取引を、サービス導入企業同士ならデジタル化できる。76万2173社が利用し、年間18.5兆円が流通するプラットフォームだ。Bill Oneでも同じような世界を目指しているのだろうか。

インフォマートのBtoBプラットフォーム請求書の概念図(インフォマートWebページより)

 「Bill Oneではやりとりの半分以上はデジタルになっていて、体験としてはそれが一番シンプル。ただしアナログを許容するのが、インフォマートとの大きな違い」だと大西氏。BtoBプラットフォームでも紙の請求書は利用できるが、オプションサービスだ。

 双方ともに完全電子化に至るまでのステップにおいては、紙で送ってくる相手についても取り込むという戦略だ。冒頭で触れたように、23年10月に向けて、現在は請求書のデジタル化に転換する過渡期にある。現在は紙で送っている企業でも、一度Bill Oneに触れれば、その後導入に至る可能性が高いわけだ。

 間口を広く取るという方針は、デジタル庁が進めている電子インボイスの仕組み「Peppol」への対応にも現れている。「Peppolで送りたいというところにはPeppol対応も行う」(大西氏)というように、メインは双方Bill Oneを通じたやりとりで、紙の請求書に対応するのと同様に、Peppolにも対応するというスタンスだ。

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