変革の財務経理

インボイスネットワークに勝機 Sansanが請求書管理Bill Oneで目指す戦略とは(4/4 ページ)

» 2022年08月02日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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Bill Oneが“行わない”こと

 このように、ネットワークを重視する考え方は、Sansanの主力事業が名刺管理であることも関係しているだろう。同社はこの4月、クラウド名刺管理サービス「Sansan」のコンセプトを、営業DXサービスに刷新した(関連記事)。帝国データバンクと連携し、多数の企業情報を掲載。営業時の顧客データベースとしての価値を高めることを狙う。当然、Bill Oneの中にあるデータは将来Sansanのデータベースに連携し、より取引先の情報を集約したものになっていく流れだ。

 一方で、Bill Oneが“行わないこと”は何か。

 例えば、LayerXやTOKIUMが目指す「支出管理」は、Bill Oneのスコープには入っていない。「経理観点で見ると重要なテーマだが、Bill Oneのスタンスとしては月次決算のサポートに注力したい」(大西氏)。支出管理系に進む場合、企業の支出のもう1つの柱である経費精算機能が重要になるが、そこはフォーカス外だということだ。

 また請求書に関連したビジネスプロセスとしては、その後の入金の消込もある。これは、請求書を送ったあと、取引先からの入金を確認する作業を指す。こちらも、例えばDeepworkが提供する請求書発行サービス「invox発行請求書」では、消込機能を特徴としている(記事参照)。また、SBIビジネスソリューションズの請求書発行サービス「請求QUICK」も、銀行口座へアクセスして入金消込をサポートするのがウリの一つだ。

 しかしBill Oneでは「入金消込は、会計システムの領域かなと思っている」(大西氏)と、この分野もスコープ外だ。

 制度開始まであと1年少々となり、導入が進み始めた各社のインボイス関連のソリューション。しかし、インボイス(請求書)の受領や発行だけでは、法令が求める機能に対応すれば、それ以上の差別化は難しい。そのため、各社は単なる受領・発行だけでなく、他の分野との連携を模索している。

国内企業200万社を潜在市場規模と置き、インボイスネットワークへの参加企業を増やすことを目指すBill One

 インボイスネットワークの拡大を目論むBill One、支出管理に進むバクラクとTOKIUM、消込を強化するinvoxと請求QUICKと、各社の戦略は異なる。そして、どの戦略も取り得るのが、会計ソフトを主軸に経費精算などのプロダクトも持つfreeeとマネーフォワードだ。インボイス制度導入後を見据えた、各社の戦略が次第に見えてきた。

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