「聞いていた給料より低い!」 手取りかと思ったら、総支給額だった──会社は補填すべき?Q&A 総務・人事の相談所(1/2 ページ)

» 2022年08月03日 10時30分 公開
[神田靖美ITmedia]

連載:Q&A 総務・人事の相談所

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Q: 最近採用した社員から、「給料が入社前に聞いていた金額と違う」と抗議を受けました。面接の際に「いま受けている給料はいくらですか」と聞いたところ、その答えが、当社が予定していた金額より低かったので、「うちはもう少し出しますよ」と言いました。

 後になって分かりましたが、当該社員が言っていたのは税金や社会保険料を差し引いた「手取り」であり、私が言ったのは税金や社会保険料を引かない総支払額です。手取りで、当該社員が言っていた金額になるよう賃金を上げるべきでしょうか。

賃金を上げる必要はある?

A: 結論から申し上げると、上げる必要はありません。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」は「決まって支給する現金給与額」、つまり私たちが一般的に言うところの「給料」について、「手取り額でなく、所得税、社会保険料などを控除する前の額である」と定義しています。相談者の方が面接で伝えたことは決してうそではありません。

 しかし多くのビジネスパーソンにとって、給料といえば銀行口座に振り込まれる額のことです。もともとの額がいくらであり、そこから何と何がいくら天引きされているかということには関心を持っていません。関心があるのは手取りだけです。

photo 画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 一方の会社側は、逆に手取りにはあまり関心がありません。関心があるのは総支払額だけという企業は多いです。税金や社会保険料に相当する分も、税務署や年金事務所に納付するという形で支出しているからです。

 筆者は賃金制度のコンサルティングをなりわいにしているため、日本人の平均賃金(総支給額)はある程度頭に入っています。しかし平均手取りがいくらかということは、今回まで、考えたことがありませんでした。

 給料と手取りの関係を一般化することは困難ですが、あえて言うと、正社員として一般的な金額の給料である場合、手取りは通勤手当を含む総額の75〜85%です。ご相談のケースですと、社長は給料の100%をもって「当社の給料」と言い、中途採用社員は実際に振り込れる額である75〜85%をもって「今もらっている給料」と言っているとしたら、齟齬(そご)が生じるのは当然と言えます。

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