プロボクシングで名をはせた亀田興毅はかつて、悪役(ヒール)として知られた――(以下、敬称略)。
元WBA世界ライトフライ級王者、元WBC世界フライ級王者、元WBA世界バンタム級王者……。日本人初の3階級制覇王者という圧倒的な結果を出した亀田は、世間から必ずしも羨望や尊敬のまなざしを向けられた存在ではなかったかもしれない。
その亀田は今、大阪市の亀田プロモーション社長、3150(サイコー)FIGHTファウンダー、3150ファイトクラブ(現KWORLD3ボクシングジム)初代会長という経営者として、ボクシング業界の発展に尽力している。
亀田はボクシングイベント「3150FIGHT」をプロデュースしていて、8月14日には自身がプロモーターライセンスを取得して初のイベントとなる「3150FIGHT vol.3」をエディオンアリーナ大阪 第1競技場で開催する。同日には、日本ボクシングコミッション(JBC)管轄外のエキシビションマッチ「ABEMA スペシャルマッチ」が開かれ、格闘家の皇治の参戦が決定した。
ITmedia ビジネスオンラインは、亀田がビジネスとしてのボクシングを、いかにして盛り上げていきたいかをインタビューした。亀田は「ファイトマネー倍増計画」を公言し、従来のファイトマネーの相場の2倍を「現金」で支払う試みを発表した。その裏側には、現在のプロボクサーの収入が魅力的ではない現実が横たわっている。亀田は、プロボクサーがボクシングのみで生活していける、十分な対価を得られる業界にしていくことを目指しているのだ。
インタビューの冒頭、格闘技メディアとしてではなく、ビジネスメディアとして話を聞きたいと伝えると、亀田は「うれしいです」と返した。
亀田は今、何を考えているのか。対峙してみると、立て板に水で業界の課題、それに対する明確なビジョンを語る「実業家・亀田興毅」が現れた。
かめだ・こうき 日本の元プロボクサーで、実業家。亀田プロモーション社長、3150 FIGHTファウンダー、3150ファイトクラブ(現KWORLD3ボクシングジム)初代会長。4歳で空手を始め、2003年にプロボクサー・デビュー。06年にWBA世界ライトフライ級王座獲得し、07年にフライ級へ転向。10年、WBA世界バンタム級王座決定戦で勝利し、日本初の世界3階級制覇を達成(撮影:河嶌太郎)――2022年の格闘技業界は、4月のゲンナジー・ゴロフキン対村田諒太、6月の井上尚弥対ノニト・ドネアをはじめビッグマッチが続きました。武尊と那須川天心が激突した「Yogibo presents THE MATCH 2022」では5万6399人を動員。そして7月のBreakingDown5では、同大会のオンラインでの視聴数、有料視聴チケット販売数の売り上げが過去最高を更新しています。特にBreakingDownの動きをどう見ていましたか?
(BreakingDownは)素晴らしいと思いながら見ていました。ボクシング業界から見れば賛否両論あるのかもしれませんが、盛り上がることは本当にいいことだと思います。最も怖いのは無関心なので。
――8月14日に、亀田さんがプロモーターライセンスを取得して初の「3150FIGHT vol.3」を開催します。どう盛り上げていきたいですか?
まずボクシングと他の格闘技の違いから説明させてください。Yogibo presents THE MATCH 2022やBreakingDownは格闘技です。一方で、ボクシングはスポーツ競技なのです。ここがまず違います。キックボクシングの団体は世界に2000以上あるといわれていて、組技、肘、膝蹴りの有無など、それぞれルールも少しずつ違います。
一方、ボクシングは世界の主要統括団体としてWBC、WBA、IBF、WBOの4団体があります。この4つの団体では、それぞれ基本的なルールが統一されているのです。ボクシングは全世界に競技人口があります。だから、それだけマーケットとして大きいのです。このボクシングという「キングオブスポーツ」を、私はもっと憧れのスポーツにしていきたいと考えています。
ではなぜボクシングが今、低迷しているのか。その背景には選手たちの収入の問題があります。
――収入の問題とは、どういうことでしょうか?
今までのボクシングの興行を分かりやすく例えましょう。例えば、相撲でいえば日本相撲協会があり、協会が年6場所を開催しているわけですね。
ボクシングにも日本プロボクシング協会がありますが、ボクシングの場合は、ジムが興行をしているわけです。これは相撲に例えて言うなら、各相撲部屋が興行をしているようなものなのです。でも、もちろん相撲では、相撲部屋が興行はしないですよね。
――それで、ビジネス的には、どんな問題が発生するのですか?
それぞれのジムが興行をするので、どうしても規模が小さくなりがちなのです。バラバラで“点”なんですよね。点と点がつながり“線”にならないのです。ブランドが統一できない。だからビジネス的にも「可能性」が生まれにくいのです。選手に対してファイトマネーを多く出してあげることができない課題が、ずっとあるのです。
私はこれまでボクシングに携わってきて、この点に歯がゆさを感じてきました。そこで、この業界の構造的な課題を解決するためのプラットフォームを作ろうと考えたのです。それが、私が立ち上げた「3150FIGHT」です。
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