消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が令和5年(2023年)10月1日に導入されます。前回に続き、税額計算の方法は事業者が決められるのか、計算においてどんな点に注意すべきか、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入について、仕入税額控除は一切認められなくなるのか売り上げにかかる消費税額の計算はどのようになるのか──など、インボイス制度の中身をQ&A形式で解説します。筆者は税理士の山口拓氏。
A22 原則として事業者で任意に決めることができますが、適用できない計算方法の組み合わせがあります。
仕入れにかかる消費税額の計算方法 | 適用の可否 |
---|---|
請求書等積上げ計算 | 適用可 |
帳簿等積上げ計算 | 適用可 |
割戻し計算 | 適用可 |
仕入れにかかる消費税額の計算方法 | 適用の可否 |
---|---|
請求書等積上げ計算 | 適用可 |
帳簿等積上げ計算 | 適用可 |
割戻し計算 | 適用不可 |
仕入れにかかる消費税額の計算方法 | 適用の可否 |
---|---|
請求書等積上げ計算 | 適用可 |
帳簿等積上げ計算 | 適用可 |
割戻し計算 | 適用不可 |
A23 インボイス制度の導入で事業者の事務負担は確実に増加します。自社の事務処理能力と納税額への影響とを比較検討してみましょう。
例えば、少額の取引を数多く行う小売業などの業種は、売り上げにかかる消費税額の計算を割戻し計算で行うのか積上げ計算で行うのかによって納税額に多大な影響が生じます。自社の事務負担増およびそれに伴うコスト増を考慮し、有利かつ対応可能な方法を採用するのがよいでしょう。
また、一定の条件(基準期間における課税売上高が5000万円以下など)を満たす事業者は簡易課税制度の適用を考えてもよいでしょう。簡易課税制度では課税売り上げにかかる消費税額に一定の割合を乗じて仕入れ控除税額を計算することになるため、仕入れ税額控除の条件であるインボイスの保存や前述のQ21の方法による計算は必要ありません。ただし、事業者の納税額に有利・不利がありますので慎重な検討が必要です。
A24 インボイス制度の導入後は、免税事業者や消費者など適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、原則として仕入税額控除は認められません。
ただし、区分記載請求書などと同様の記載事項が記載された請求書などの保存があり、かつ、帳簿にこの経過措置の規定の適用を受ける旨の記載がある場合には、次の通り、制度導入後6年間は仕入税額相当額の一定割合の仕入税額控除が認められます。
期 間 | 割合 |
---|---|
令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日まで | 80% |
令和8年(2026年)10月1日から令和11年(2029年)9月30日まで | 50% |
消費税専門税理士。また「窮地にある中小企業を1社でも多く救いたい」との使命感を持ち、売り上げアップや経営助言など中小企業に特化した支援を積極的に行っている。さらに、顧問先の税務調査の負担軽減のため税理士法上の書面添付制度を活用し、平成30年度には税務調査省略割合100%の実績を上げている。https://www.yamaguchitaku-office.com/
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