“残業代切り捨て”が違法なら、未払い分を「さかのぼって支給」は義務なのか?Q&A 社労士に聞く、現場のギモン(2/2 ページ)

» 2022年08月16日 10時00分 公開
[卯城恒生ITmedia]
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時給労働者も分単位である必要がある

 行政通達では残業時間の端数処理についての取り扱いを定めていますが、実務上時給者の労働時間のカウントにおいても同じ取り扱いをしておく必要があります。アルバイト従業員は一般的に時給者であることが多いため、タイムカードやICカードを用いて出社時間と退社時間のほか休憩時間をカウントしたうえで、1時間あたりの時給単価を乗じて対象となる計算期間における給与額を算出することになります。

 アルバイト従業員を多く抱える企業などでは毎月の給与計算処理の工数を減らすため、日ごとの労働時間の端数を丸め処理しているところも見受けられます。前述した通り、日ごとの丸め処理は労働基準法上認められていませんので、仮にそのような取り扱いをしている企業については早急に改善が必要です。

 なお、これまでに15分単位で丸め処理を行っていた過去の期間における未払い分の残業代については、従業員によって未払い賃金として請求される事も想定されます。2020年4月以降に発生した賃金請求権の消滅時効は3年となりましたので、正しい計算方法で再計算した残業代を支給する必要があるでしょう。

 その際、過去の給与にさかのぼり各月の給与を修正する方法や一時金で支払うなどの方法が考えられますが、いずれの方法についても雇用保険料の修正や所得税の再計算、または賞与処理が必要になりますので、事務担当者の負担も考慮して方針を決定することをおすすめします。

著者:卯城恒生(うじょう・こうき) 社会保険労務士

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1974年神奈川県横浜市生まれ。2007年に社会保険労務士試験合格後、2009年に卯城社会保険労務士事務所を設立。

労働関係法規に関する助言を行い、適切な労務環境の整備を図りながら、中小企業の発展を支援することを得意としている。


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