――中村プロデューサーがK-1に関わるようになった経緯は?
私はもともと格闘技の記者でした。慶應義塾大学在学中の2002年に専門誌の『ゴング格闘技』(アプリスタイル)でアルバイトを始めました。そのころは格闘技バブルの時代で、何もしなくても仕事が入ってきました。それでも人出が足りなくて、私のような経験が浅い人間でも「記事を書いてくれ」と頼まれるほどだったのです。
06年にフジテレビがPRIDEから撤退して、徐々に格闘技人気の衰退が始まりました。09年に魔裟斗さんも引退するなどした結果、格闘技のボリュームが減り、仕事がなくなったのです。現場の取材陣の数も減っていきました。そんなときに、私自身、フリーライターとして活動を続ける中で、14年にK-1が再出発するタイミングで「K-1の仕事を手伝ってみませんか?」とオファーを受けたのです。
当時はまだ、そこまで深く携わっていたわけではないのですが、同じK-1という名前でやる以上、過ちを繰り返してはいけないということで掲げたコンセプトが「100年続くK-1」です。
これはK-1を競技として確立させた上で、プロとしてのイベントを大きくしていこうという考えのもと、ジム・アマチュアを底辺とし、プロを頂点とするピラミッド構造を作るビジョンです。プロの興行が大きすぎるとバランスが良くない部分もありますので、全国にジムを作り、アマチュア選手を育成して、K-1のアマチュア大会に出場する流れを作りました。
現在、契約しているK-1ファイターは500人ほどいますが、後楽園ホール規模の大会(Krush)からプロとしてキャリアを積んでいく流れです。以前は頂点の部分が大きすぎて、底辺が支えきれず、崩れてしまったのです。
――武尊と天心の戦いについては実現まで7年近くかかりました。
一時はお互いに名前を出すことも難しい時期がありましたが、本人同士の戦いたいという思い、ファンのみなさんのこの試合を見たいという思い……。そういったものを感じて、私たちもこの試合を実現させるために動こうとなりました。過去の経緯など全てを含めたことが、あれだけの大きなイベントを実現させたのだと思います。
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