クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型エクストレイル 改革最終年に臨む日産(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2022年09月12日 11時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 日産自動車がミドルクラスSUVであるエクストレイルをフルモデルチェンジした。「余計な話はいいからクルマはどうだった?」というせっかちな方向けに書いておくと、出来は良かったのでご安心を。欠点らしい欠点のない仕上がりだったので、買いたい気持ちがあるならば、お勧めしておく。なお、詳細なインプレッションは余計な話の後、後編で書く。

 さて、では心置きなく余計な話を始める。日産は2020年5月に事業構造改革計画「Nissan NEXT」を発表した。ありていに言えばそれまでの日産はボロボロの状態というか、下手をすると存続すら危ぶまれる状態にあった。ショールームに並ぶクルマはどれも他社より1世代は古く、当然値引きしないと売れない状況だ。

 値引きをすれば中古車価格が暴落して、日産ユーザーの手元にあるクルマの資産価値が落ちる。つまり下取り査定が付かなくなる。こうしてロイヤリティーユーザーの資産価値破壊をやってしまった結果、当然ながら買い替えのサイクルが機能しなくなる。「そんなに下取りが安いならもう少し乗るか」。みたいな引き延ばしが多発した。その内にホントに下取りゼロになり、昨今の価格の高いクルマを頭金なしで分割払いしようとして、あまりの金額に驚くことになる。

 ちなみに日産の見積もりシミュレーターで、新型エクストレイルAWDの中間グレード「X」をベースに適宜セットオプションを組み込み、諸費用を加えた総額は約437万円。任意保険は別だ。これをさらに日産のクレジットシミュレーターに頭金無しの均等36回払いで突っ込むと、毎月の払いは何と13万3000円。まあ普通の勤め人には到底払える額ではない。頭金として、下取り車で半分の220万円充当できれば、6万6000円ほど。これだって大変だが、まあようやく気合い次第の領域に入る。多分頭金を同条件で、残価設定クレジットにすれば、本当に現実的な話になるだろう。ただし、残価設定クレジットにすると、次回からは下取り車がない。

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