クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型エクストレイル 改革最終年に臨む日産(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2022年09月12日 11時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

「Nissan NEXT」で示された事業構造改革プラン

 過去の失敗の原因は、新興国マーケットで絵空事のようなビジネスを描いたことにある。要するに新興国で勝負するための原資が欲しかったから、既存マーケットの商品開発費用を止めてしまったということなのだが、この皮算用が絵に描いたように滑った。わざわざ稼げているマーケットを犠牲にして、水物の新規ビジネスに打って出て失敗したその構図は、結果が出てから振り返れば、華麗ともいえるほど明確な失敗だった。だからこそ、その時ないがしろにしてしまった日本マーケットに抜本的な対策を打たざるを得なくなったともいえる。

 そうしてにっちもさっちも行かなくなった以上、日産は、一度堅実な目でビジネスを点検して、かなり基本のところへ戻って自動車ビジネスを再構築せざるを得ない。そのプランこそが「Nissan NEXT」であり、今回のエクストレイルもその構造改革の一翼を担うクルマである。

 ちなみに「Nissan NEXT」で示された事業構造改革プランはかなりしっかりしている。どこを見ても己の今の状況を正確に把握して、何をどうやって改善するかが、可能な範囲できっちり考えられているので、一度読んでみるといいと思う。

 「Nissan NEXT」の基礎の部分は極めてシンプル。悪い部分を切除して、良い部分を伸ばす。当たり前の話だが、分かっていても、なかなかこれができない。不良資産をサンクコストと割り切って整理すると共に、重点市場とセグメントに持続的にリソースを投入する。そのためには「最適化」と「選択と集中」という2本の柱が必要だ。

  • 最適化
    • 生産能力の最適化
    • 商品ラインアップの効率化
    • 固定費の削減
  • 選択と集中
    • コアマーケット
    • コアテクノロジー
    • コアモデル

 最適化についてはすでに詳細が発表されており、日産自身の手によって出血を止めるオペレーションが粛々と進んでいる。エクストレイルが問われるのは「選択と集中」の方だ。コアマーケットに絞って、コアモデルを打ち出し、コアテクノロジーを投入するということは、基本空振りが許されない。選択と集中なのだから外すわけにはいかない。さすがに1台もミスが許されないとまではいわないが、多分当面は勝率7割くらいのラインを保たないと軌道に乗らないと思う。ちなみに集中するセグメントは日産の資料を見るとかなり具体的に書かれている。

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