クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型エクストレイル 改革最終年に臨む日産(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2022年09月12日 11時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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「タフさと上質さ」の両立?

 さて、今回のエクストレイルの開発テーマだが、日産の説明によれば、「タフさと上質さ」の両立だという。元々エクストレイルはSUVとしては比較的クロカン寄りのクルマで、その立ち位置の違いは多分都市型のムラーノを思い起こせば分かるだろう。防水シートをウリにして、水着のままで乗り込んだり、雪まみれのスノボをポンと放り込むコマーシャルからも、そのギア感は強く印象付いている。なので「タフさ」こそエクストレイルという主張には全く違和感がない。

 けれども上質を狙うのは少しピンと来ない。日産内部の企画で、そう結論づけられた理由の一つは、顧客年齢の変化にある。ここ10年で顧客層が高年齢化しているのだそうで、エクストレイルの顧客の内、40代以上の占める割合は、11年には66%だったものが、20年には75%に上がっているのだという。

 さらにセグメントの購入価格帯も350万円以上が過半数を占めるとのことで、顧客年齢と購入価格帯の上昇をにらみつつ、エクストレイルがこれまで提供できていなかった価値をしっかり拾っていこうと考えたらしい。

 正直なところ、機能側の話はともかく、デザインテイストにおいてギア感にひも付くタフさと、上質さが両立するものかと少し疑問に思うのだが、実際のクルマを見てみると、機能についてはタフさを、デザインについては上質さを表しているように筆者には見えた。

 さて、クルマに乗る前の話はもう十分に書いただろう。明日掲載の後編では実際に乗ってどうなのかを重点的に書こうと思うのだが、多分最初は可変圧縮比エンジンの説明をしなくてはならない。その後でインプレッションとなる予定である。

後編:新型エクストレイル 欠点のないクルマの意味

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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