2023年10月に開始を控えるインボイス制度は、非常に多くの企業に影響する。さらに24年1月には猶予されていた電子帳簿保存法の電子保管義務も始まる。企業は、これまでの紙での請求書のやりとりを改め、実質的に電子化することを余儀なくされることになる。
これは請求書の送受信をサポートするSaaSを提供する企業にとっては、非常に大きなチャンスだ。LayerXやDeepWork、TOKIUMなど新興系ベンダーは矢継ぎ早にプロダクトを投入し、CRMの雄であるSansanや、クラウド会計ソフトのマネーフォワードやfreeeもこのジャンルへの製品投入を進めている。
では、企業間取引のデジタル化プラットフォームとして、すでに強いポジションを持っているインフォマートは、この流れをどう見ているのか。同社取締役の木村慎氏に聞いた。
インフォマートはもともと飲食店向けのマッチングビジネスからスタートした企業だ。受発注や規格に関してフォーマットを定め、Webで使えるEDIとして「BtoBプラットフォーム」という名称で外食産業向けに提供してきた。導入企業は77万社以上、145万事業所にのぼり、「5店舗以上で展開する飲食業の7〜8割が利用している」(木村氏)という。
そこから請求書データのやりとりに特化し、飲食店以外への展開を進めたのが2015年だ。タイミングは悪くなかった。まず「働き方改革」が叫ばれ業務のデジタル化、効率化を進める動きが起きた。さらに、コロナ禍が起こり在宅勤務への対応が急務となった。そうした背景の中で、76万社が使うサービスにまで成長している。
請求書のやりとりをデジタル化するというと、受け取った紙の請求書やメールに添付されたPDFをOCRに掛けてデータ化しアップロードしてくれるサービスをイメージするかもしれないが、それは違う。昨今登場するほとんどのサービスは、そういった紙を電子化することを付加価値として訴求しているが、インフォマートのBtoBプラットフォームは、最初から完全にデジタル化されたものだ。
請求書の発行側と受領側の双方がBtoBプラットフォームを導入していることが前提で、Web上からデジタルに発行し、デジタルデータとして受領される。紙に印刷して郵送し、それを再びスキャンしてOCRに掛けるといった無駄なやりとりは発生しないし、当然精度も100%だ。
いってみれば、これは受発注のやり取りにおける最終的なゴールだ。「デジタル化でペーパーレスになり、PDFのやり取りよりも楽になる。PDFを使わないことで、保管コストも安くなる」と木村氏。
価格の違いもある。紙をスキャンしたりPDFをOCRに掛けるといった作業には労力がかかるからだ。PDFのOCRにしても、精度を100%にもっていこうとすれば、どうしても人手が必要だ。そのため、月額単価2万〜3万円のBtoBプラットフォームに対し、付加機能の付いた競合サービスは数倍の価格になってしまう。
請求書受領サービスに参入した各社は、アナログの紙やデジタル化には至らないPDFへの対応を特徴としている。いわば、「アナログtoデータ」のサポートをするサービスだ。一方インフォマートは最初から「データtoデータ」を想定したシステムを進めているのが大きな考え方の違いだ。
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