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三菱地所で起業した3人の社長 今だから話せる「本当に苦労したこと」0→1から収益化(4/5 ページ)

» 2022年09月15日 05時00分 公開
[増田忠英ITmedia]

華やかに見える立ち上げの裏で“本当に苦労したこと”

高野 新規事業を立ち上げたと聞くと、すごくキラキラして見えますが、つらいこともあったかと思います。それをどう乗り越えたのかを聞かせてください。

米田 最終審査の時に上層部などからコメントをもらうんですが、そのコメントを見て、僕のビジネスモデルがサブスクであるところに注目してくれているんだなと。で、フィジビリティスタディを走らせて、事業化時点のジャッジになると、「サブスクよく分からないんだよね」みたいな(笑)。

 それって何が原因かというと、やはり不動産会社なんで、そこから離れたことをやろうとすると、評価する物差しがないんですよ。不動産投資の物差しはいくらでもあるんですけど、旅とか観光とかになると、たちまち「えっ?」となるわけです。それに対して僕が用意できていなかったのがまずかったなと、反省しながらやっていました。

中村 私のチームはメンバーが4人います。当初は、自分の思い入れが強い分、こうしたら良いのではないか、こういう方がうまくいくのではないか、と思ったことを積極的に発信していました。でもそうすると、みんな自分の仕事観がなくなり、ただの作業部隊みたいになって、モチベーションが下がってしまっているように感じることがあり反省しました。

 今は、自分が言いたい・やりたいことよりも、メンバー自身がどういう仕事をしたいか、どういうサービスを提供したいか、どうこのチームにコミットしたいのかという点をコミュニケーションを通じて感じ取りながら、一体で事業に取り組むチーム作りに取り組んでいるところです。

高野 モチベーションを高めるために気を付けていることはありますか?

中村 最初はビジョンを掲げて、みんなに強く発信したら、共感してついてきてもらえると思ったんですけど、意外とみんな引いてしまって(笑)。それからは、それぞれのメンバーが何にモチベーションを感じるかとか、どういう仕事のやり方が快適かとか、割と細かく確認しながら、メンバーが主体的にそれぞれの仕事に取り組める環境づくりを重要視しています。

本田 自分の中ではビジネスモデルや収益を上げることに自信はあったんですが、実際に始めてみると、成果が出るまでグッと我慢するところが、ちょっときつかったですね。

 普通に家具を引き取って売るというリサイクルショップのようなことは当然できるんですけど、それでは会社の事業に何の親和性もないので、空いているオフィスに家具を置いてテナント誘致する取り組みを実施しましたが、テナントさんが決まるまで数週間から数カ月かかるので、どうなるか心配でした。

 ただ、想定より早くテナントさんが内定してからは良い評価が得られるようになり、後押ししてくれる人も増えてきた印象があります。ですので、数字はうそをつかないんだな、ということと、やはり0から1って大変だけど、そこを越えると、また視界が広がって、新しいことに自分のリソースを割けるんだなということをすごく感じました。

photo 本田宗洋(ほんだ・そうよう) エコファニ/三菱地所 新事業創造部 副主事。2013年三菱地所入社。入社以来一貫して、オフィステナントリーシング・オフィスビル運営管理業務に従事。オフィスの現場で感じたことを新ビジネスにすべく、2020年新事業提案制度「良質なオフィス家具を必要とする企業・社会に届ける『エコファニ』」を応募し合格。2021年12月より現職、有楽町ビル9階約600坪の倉庫で約3000点の家具に囲まれ邁進中。家具の引取・販売だけでなく、不動産オーナーとして既存物件の多様な貸し方に対応すべく家具セットアップの企画やレンタルにも対応。WFH用として個人へのチェア販売も歓迎

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