三菱地所が毎年、社内で実施している「新事業提案制度」。同制度は2021年度からグループに拡大し、三菱地所グループ新事業提案制度「MEIC(Mitsubishi Estate group Innovation Challenge)」として実施中だ。
毎年30前後の新規事業提案の中から、実際に事業化に結び付くのは2、3件程度。そんな狭き門を潜り抜けた3人は、いかにして新規事業を実現させたのか――。
三菱地所と、コワーキングスペース・コーポレートアクセラレーターを運営するゼロワンブースター(東京都千代田区)は、個人向け会員制インキュベーションオフィス「有楽町『SAAI』Wonder Working Community(以下、SAAI)」を舞台に、施設横断型・事業創造コミュニティカンファレンス「01 Community Week2022」を6月20〜24日に開催した。
冒頭のセッションの模様は【大企業とベンチャー、仕事と遊び、都市と地域 「ボーダーレスな生き方」の驚くべき効果】でお届けした。
有楽町SAAIから事業を創造するキープレーヤーのセッションで登壇したのは、三菱地所で社内起業した膝栗毛代表の米田大典氏、30min. 代表の中村瞳氏、エコファニ代表の本田宗洋氏、そしてモデレーターで全日本空輸(ANA)の新規事業に取り組む高野悠氏。約1000人の視聴者の前で、三菱地所という大企業で起業した経緯を話した
高野 私自身、今まさに社内新規事業の立ち上げに挑戦中なので、今日は楽しみにしています。まず、皆さんの自己紹介と事業の紹介をお願いします。
米田 僕は05年に入社しました。もともと18年にスタートアップの事業支援を行いつつ、有楽町エリアのリブランディングプロジェクトでSAAIの企画・立ち上げを担当していました。SAAIのコンセプトを「おもいつきをカタチに」としたことから、自ら「おもいつきをカタチに」してみるべく、19年に社内の新事業提案制度に応募しました。
その後に社内審査を通過し、事業化したのが「膝栗毛」です。会社も設立しました。膝栗毛とは、歩いて旅をするという意味です。歩いて新しい場所や人に出会うリアルな体験を膝栗毛アプリがサポートして、歩き続けたくなる体験を構築します。
中村 私も05年入社です。19年に育休から職場復帰をしました。その間、私自身が家事代行サービスに助けられた経験と、ペイン(編集部注:課題や悩み)を感じながらもサービスを使えない周囲のお母さんたちを見てきたことから、家事代行を社会インフラにしたいという気持ちで「30min.(サーティーミニッツ)」というサービスを事業化しました。
既存の家事代行サービスは、最低依頼時間に2、3時間という縛りがあることが一般的ですが、30min.はマンションやエリア内を巡回する仕組みをつくることで30分単位で利用できるのが特徴的です。19年度の新事業提案制度で提案し、翌年から約1年半の間PoC(概念実証)を重ねて、21年10月にサービスをローンチしました。
本田 私は、リユース家具の引き取り・販売サービス「エコファニ」を立ち上げ、運営しています。13年に入社し、グループのビル管理会社に出向して、丸の内のオフィスビルの運営管理を4年間担当しました。その時に、オフィスからの退去時に捨てられる家具がもったいないなと感じました。
17年からの4年間は、空室にテナントさんを誘致する部署に在籍しました。その時は、家具を使って居抜きのセットアップをつくったらビジネスとしてありではないかと考えました。そして、ちょうど30歳になる年に、30代前半をどう過ごすか考えた時に、社内ベンチャーも面白そうだと思い、これまでの8年間で感じたことを卒業論文のような形で提案し、20年度の新規事業提案制度に合格しました。
21年に専属の部署に異動し、約7カ月間フィジビリティスタディ(プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること)をやり、それなりの成果が出たので、社内の新規事業という形で始めました。有楽町ビルにリユース家具を約3000点、常時在庫しながら展示しています。
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