――NFTデジタルチケットの特典を悪用する人が現れることは、全く想定していなかったのですか?
過去に私も格闘技の大会をたくさん見てきましたし、自分も関ってきました。ですが、こういう形で花束贈呈を(する人が出ることは)見たことがなかったし、想定していなかったですね。
これからは花束を渡す人たちに対しては、「投げたらだめですよ」「必ず渡してくださいよ」といったオペレーションを(する必要がある)。だけど普通の一般常識というかモラルの中では、予期せぬことだという風に認識はしているんですけど。
ただ起きてしまったことに関しては、言い訳はできないと思います。やはり先の先まで想定して、他のこともしっかり準備をする必要があると、あらためて思いました。
――今回のことで何かペナルティーや法的措置を求めていくことを、現時点で考えていますか?
何が目的かが分からないですよね。そういうことで売名行為をする人もいる。SNSも含めて何でもありの時代になることの悪しき一例だと思います。
ただ徹底的に向き合いたいと思いますし、普通の常識人であれば(本人が)出てきて謝罪をするんじゃないですか。日本という国で生きていこうと思うのであれば。
こんなことを日本中の人たちがサムズアップ(グッドマーク、賛意)するはずがない。日本は礼儀は重んずる国で、それが世界からも評価されている国であるはず。私も日本人の素晴らしいところだと誇りに思っていたことを、日本人によって汚されたことが本当に嫌な感じです。怒りというよりもすごく残念だし、むなしい。それが自分たちが関わる場所で起きた。
そういう愚劣な行為をはたらいたことを悪いと思っているのなら、私は(本人が)謝罪するべきだと思います。普通の社会では許されることではない。だから法的に何かをするということではなくて、法律論ではなくて、もっと人間の根源の部分のものだと思っています。
以上が榊原代表とのやりとりだ。
同イベントはABEMAで全試合を完全生中継した他、U-NEXT、スカパー!、RIZIN STREAM PASSなど複数の国内プラットフォームで配信した。それだけではない。FITEなど北米のプラットフォームに加え、欧州、アフリカ、南米、オセアニア、アジアなど世界中に向けて配信していた。その中でフロイド・メイウェザーへの非礼な行為が配信されてしまった形だ。
榊原代表は、メイウェザーと朝倉未来の試合が終わった瞬間にメイウェザーサイドである赤コーナーに向かい、メイウェザーと(メイウェザーの)TMT社のジェームズ氏に謝罪したという。すると、「起きたことだし気にするな」と答えたそうだ。だが、「彼らからすると、どこかで(日本は)アウェイで、日本の人たちに受け入れられていると思いながらも、それは“表向きのウェルカム”で、『本心はこれかよ』と(取られた)と思わないでもなかった」ため、再び控室へ謝罪に訪れた。
すると、メイウェザー側は「いろいろなことがあるから。これはこれで起きてしまったことなので仕方がないと、心が大きい形で受け止めてくれた」(榊原代表)と、謝罪を受け入れたのだという。
榊原代表が度重なるコミュニケーションを経て、メイウェザーとRIZINの信頼関係を築き上げてきたのは紛れもない事実だ(フロイド・メイウェザーVS.朝倉未来の超RIZIN 榊原CEOに聞くエキシビションマッチ・ビジネス脚光の舞台裏)参照。メイウェザーが那須川天心と戦った2018年のRIZIN.14の時と比べると、メイウェザーは公開練習をしたり、記者会見で質疑に応じたりするなど、プロモーションへ多大な協力をしている。それは互いの信頼関係があってこそ成立するものだ。
イベント前日の記者会見でメイウェザーに「榊原代表のどんな部分に信頼を感じたのか?」と聞くと、以下のように答えた。
「榊原代表は正直で、言ったことをしっかりやる。そういう認識を持っています。たくさんの時間をかけ何度も会って話すうちに、そういう部分が垣間見えました。世界がコロナでシャットダウンされている中でも、彼はラスベガスに4〜5回会いに来てくれて、その都度、建設的な話をして関係を保ってきました。その間に戦略などビジネスの話をして、ここに至っています。
そういう風に世界中の人と関係を作っていくことが、今の自分のやっていることなのです。そんな中でも正直で、言ったことをきちんとやる人と、自分が仕事をするのは当然だと思っています。榊原代表は素晴らしい人です」
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