スタバ、中国で2025年までに3000店舗出店 「9時間に1店オープン」実現に疑問の声も浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/5 ページ)

» 2022年09月29日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

地元ブランドから追われる立場に

 中国人のコーヒー市場は1999年に進出したスタバが時間をかけて耕してきた。10年前半の時点でもコーヒーはポピュラーな飲み物ではなく、1杯当たりの価格は庶民のランチの2〜4倍と高価で、ドリンクの注文方法やふさわしい服装などを紹介する「スタバ訪問マニュアル」的なコンテンツもネットに流れていた。

 その後コーヒーは若者の間で徐々に浸透し、今では学生も気軽に飲む大衆ドリンクになった。21年のスタバの全世界での売上高に占める中国市場の比率は13%で、米国に次いで2番目に大きい。

 スタバは中国でコーヒーを広めた「先駆者」かつ「王者」ではあるが、伸び続ける市場では強力なライバルも続々と登場し、追われる立場としてプレッシャーにさらされている。

スターバックス創業者兼暫定CEOのハワード・シュルツ氏。写真は、17年の上海ロースタリ―の開店祝賀会のもので、アリババの創業者ジャック・マー氏を案内(出典:スターバックス、Photo gallery: Celebration, joy and awe as doors open at Shanghai Roastery

 そもそも同社が19年以降、急激に出店ペースを上げたのは創業1年足らずでユニコーン(企業価値10億ドルの未上場企業)となり1年半で上場を果たしたluckin coffee(瑞幸珈琲)の猛追を受けたからだ。

 スタバは「サードプレイス」としての店舗にこだわり、デリバリーに否定的だったが、luckinに対抗するために18年にデリバリーも始めた。この決断はコロナ禍で大きな助けとなり、今は毎日5000人の専属配達員が注文から平均19分でコーヒーを配達している。

 luckin coffeeは20年に不正会計が明るみに出て経営危機に陥ったが、経営陣を入れ替えて再起し、22年6月末時点で中国最多の7195店を展開する。

 このほか「Manner」「Seesaw」など高品質の豆を使ったスペシャルティコーヒーの中国新興チェーンも台頭し、「愛国」「個性」がキーワードのZ世代の人気を集めている。最近ではカナダ発カフェチェーン大手「Tim Hortons」がテンセントと資本提携し、中国市場を強化。さらに、「奈雪の茶」「喜茶」などティードリンク大手が、コーヒー分野に進出するとの噂も絶えない。事実、喜茶はSeesawに出資している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.