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「目標未達に慣れた」社員たち やる気に火を付ける、たった1つの方法Q&A 総務・人事の相談所(3/3 ページ)

» 2022年09月30日 07時00分 公開
[神田靖美ITmedia]
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能力より計画

 南アフリカで、若年失業者を対象にある実験が行われました。それは一部の失業者に対し、月曜日から金曜日まで、

  • 何曜日の午前あるいは午後に
  • どの新聞の求人欄を見るか
  • どの会社に履歴書を送るか

を計画書に書いて提出させるというものでした。また、下記の項目について数値目標を立てさせました。

  • 1週間に何社の求人をチェックするか
  • 何社に履歴書を送るか
  • 何時間求職活動をするか

 これらの結果を振り返ると、実験対象になった失業者は、他の失業者に比べて履歴書の送付数が15%、採用提示が30%、雇用は26%、それぞれ増加しました。

 計画の効果については他にも、「学生にレポートをいつどこで書くかを紙に書いて提出させたところ、提出率が2.2倍になった」「ハーバード大学で学生に将来の目標を書かいて提出せたところ、計画書も提出した10%の学生は10年後、実験参加者の全財産の96%を保有していた」などの実験結果があります。

 「自己効力感」というものがあります。何かを実現しようとするとき、「これをやるために必要なことは分かっている。私にはそれを行うことができる」と信じられる感覚です。単に自信を持つことではなく、正しい計画を実行できるという信念です。自己効力感を持てることは成功との相関係数が、その仕事に必要とされるスキル以上に高いことが分かっています。

 コロンビア大学教授で、人間が目標を達成する過程を研究している心理学者のグラントは著書で「目標達成のためのアドバイスを一つだけ選べと言われれば、わたしは『いい計画を作ること』と答えます」と述べています(ハイディ・グラント ハルバーソン『やってのける』2013年、大和書房)。

 未達慣れした社員を覚醒させる最善の方法はこれにつきます。実行したかどうかを自己採点できる程度の詳しさがある計画を立ててもらうことです。上司は部下の目標そのものだけでなく、実行計画の質もチェックする必要があります。

著者紹介:神田靖美

人事評価専門のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表取締役。企業に対してパフォーマンスマネジメントやインセンティブなど、さまざまな評価手法の導入と運用をサポート。執筆活動も精力的に展開し、著書に『スリーステップ式だから、成果主義賃金を正しく導入する本』(あさ出版)、『会社の法務・総務・人事のしごと事典』(共著、日本実業出版社)、『賃金事典』(共著、労働調査会)など。Webマガジンや新聞、雑誌に出稿多数。上智大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。MBA、日本賃金学会会員、埼玉県職業能力開発協会講師。1961年生まれ。趣味は東南アジア旅行。ホテルも予約せず、ボストンバッグ一つ提げてふらっと出掛ける。

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