16億円もかけたのに、なぜ「国葬」がチープに感じたのか 「低賃金」ならではの理由スピン経済の歩き方(4/7 ページ)

» 2022年10月04日 10時40分 公開
[窪田順生ITmedia]

「平等」に固執

 英国と比べて、参列客が2倍で時間が3倍になっているということは、警備の費用や海外VIPの対応費用もそれだけかさんでいる。概算では警備に8億円、外国要人の接遇に6億円程度ということだがもっとかかっているかもしれない。

 こういう部分が肥大化してしまえば経費削減のため、削りやすいところをザックリと削らなければいけない。そう、会場の設営費や演出だ。国葬の演出したイベント会社「ムラヤマ」の落札価格は1億7600万円で、16億6000万円の1割にも満たない。つまり、SNSで揶揄(やゆ)される「ハリボテ祭壇」やパイプ椅子になってしまったのは、日本の国葬が世界の国葬と比べて、異様なほど規模や時間が膨れ上がって、警備費など周辺のコストも異様に膨れ上がったからなのだ。

(提供:ゲッティイメージズ)

 では、なぜ国葬は肥大化したのか。「安倍元首相はエリザベス女王よりも偉大なのでしょうがない」という安倍信者の方もいらっしゃるだろうが、根本的なところでは、「安いニッポン」と同様、「平等」に対する過度な執着のせいだ。

 元衆議院議員の杉村太蔵氏が、国葬の招待状をもらっていたように、今回の招待客には明確な基準がない。少しでも安倍元首相と縁のあった人たちに、手当たり次第声をかけている。なぜこんなにアバウトになってしまうかというと、国葬自体に法的根拠がないからだ。ルールがないので、官僚は官邸に忖度(そんたく)しながら、コスト度外視で招待客をリストアップするしかない。

 「あの人を呼ぶなら、あの人も呼ばないと」「いや、力関係的にはあそこにも声をかけないと失礼に当たる」なんてやっているうちに莫大な参列客に膨れ上がったのだ。肥大化をさらに悪化させたのが、「無宗教のお別れ会」という側面だ。

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