ご当地バーガー「ラッキーピエロ」は、なぜ函館で圧倒的に強いのかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2022年10月11日 10時24分 公開
[窪田順生ITmedia]

ラッキーピエロのスタイル

 このように、フランチャイズと異なって、ひとつひとつの店の「個性」を際立たせる戦略なので当然、それぞれの店の戦略も微妙に違ってくる。分かりやすいのが、価格だ。前出のインタビューで、王会長はこんな独自の価格戦略を明かしている。

 『ソフトドリンクの値段にしても学生の多い本町店や松陰店の120円、観光コースのお店はM150円、地域によってこれぐらい変えています。学生街は学生さんにサービスしてあげよう、観光コースは全国から来ていただいて感謝感激150円でいいよねって』

(出典:ラッキーピエロ)

 ここまでラッキーピエロの「反フランチャイズ戦略」ともいうべき、大手チェーンの真逆をいく独自の戦い方を見てきたが、個人的にはこれは近い将来、日本の地方を救うモデルケースになると確信している。

 人口減少社会の中で、地方の外食やサービス業が生き残っていくには、ラッキーピエロのように、地元客と観光客の双方から支持されるようなスタイルを極めていくしかないからだ。

 われわれはあまり意識してこなかったが、実は日本の最大の強みは「人口」だった。先進国の中で1億人を超すという巨大なパイを持っているのは米国と日本だけだった。

 1億人もいたので、「ものづくり」もできた。豊富な労働力があることはもちろんだが、消費者もたくさんいるので、国内市場でテストマーケティングをして、技術と品質を磨いて、それを海の向こうへ持っていって勝負することもできた。技術力もさることながら人口がものづくり企業のイノベーションの背中を押したのだ。その代表が自動車だ。今や斜陽だが、家電や半導体などもそうだ。

 そして、この「人口」という強みの恩恵を最も受けたのが、全国展開をしているフランチャイズチェーンだ。過疎化だなんだと言っても、まだそれなりの人口が地域に残っているので、その地域の客を取れば商売がうまくいった。コンビニでも外食でも同じ品質のものを効率良く提供する店を全国津々浦々に広めていけば業績は右肩あがりだった。店舗を出せば出すほどもうかった。

 それを体現したのがセブン-イレブンやイオン、そして今はかなり苦戦しているが、かつて全国でFCが2000店舗もあった「小僧寿し」や大手ファミレスだった。

 しかし、人口が減少に転じて「縮んでいく社会」では、このようなビジネスモデルは遅かれ早かれ破綻していく。何をどうあがいても、その地域内の消費者の絶対数が減っていくので、各地域で「地元客」をしっかりと握るという全国フランチャイズチェーンのやり方はジリ貧なのだ。

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