では、どうすればいいかというと、地元の常連だけではなく観光客、つまりは地元以外の人間もしっかりと取り込んでいくのだ。つまりは、ラッキーピエロのやり方である。
人口が減っていく日本において、効率や低価格を追求することは地獄への一本道だ。効率を追い求めるとブラック労働にしかならないし、低価格は低賃金を固定化させて、「消費者=労働者」を貧しくさせることにしかならない。
だからこそ、地方企業は効率や低価格を捨て去らなくてはいけない。ラッキーピエロのように効率が悪くても、「楽しさ」や「感動」にフォーカスを当てて、その場所でしかできない、この店でしか得られない体験に価値をつけていく。それは地方の活性化にもつながるし、長い目で見れば「安いニッポン」から脱していくことにもなる。
日本経済がいつまで経っても閉塞感がある一因は、人口増時代のロールモデルをいまだに引きずって、松下幸之助や本田宗一郎、そして稲盛和夫など大企業経営者のやり方から学ぼうという風潮があることだ。
日本企業の中で大企業はわずか0.3%に過ぎず、99.7%は中小企業だ。0.3%の方法論が99.7%に適応されることなどあり得ない。つまり、日本のほとんどの企業は、大企業の方法論をいくら真似したところで、なんの役も立たないのだ。
そういう意味で本当に役に立つのは、成功している地方企業だ。マックやモスというこれまでの「成功者」が敵わないという事実がすべてを物語っている。これからの日本の経営者は、ラッキーピエロの独自戦略を真摯(しんし)に学ぶべきだ。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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