6カ月取引停止処分で注目の「日本アムウェイ」 消費者庁が問題視した勧誘の実態とは?具体的ケースを紹介(1/4 ページ)

» 2022年10月19日 06時18分 公開
[ITmedia]

 消費者庁が健康食品や化粧品などの家庭用日用品を販売する米アムウェイ日本法人(日本アムウェイ)に対し、目的を告げずに勧誘活動をしていたなどとして6カ月間の取引停止命令を下したと発表した。

photo アムウェイ(出典:同社公式Webサイト)

 根拠となったのは、特定商取引法38条1項と同法39条1項。具体的には(1)勧誘目的の不明示(明示義務違反)、(2)公的な場所以外での勧誘行為、(3)迷惑勧誘、(4)関係書類の提供拒否(概要書面の交付義務違反)の計4点が法律に抵触したという。消費者庁が問題視した勧誘手口はどのようなものなのか。報道発表資料をベースに紹介する。

photo 消費者庁のプレスリリース

事例その1 始まりはマッチングアプリ

 まず1例目はマッチングアプリを使った勧誘だ。資料によると、被害者A(以下A)は2021年3月、マッチングアプリで知り合った勧誘者Z(以下Z)から、メッセージアプリの通話機能を通じて「おいしいご飯が食べられる店がある」「前も行ったことがあっておすすめだから一緒に行こう」などと、商品を購入させる予定であるにも関わらず、勧誘目的を告げずに面会を求められた。

photo マッチングアプリのイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

「近くで知り合いがサークルをやっている」

 ZはAとの食事中に「知り合いが近くでサークルをやっていて、自分もそこに所属している」「Aにも一緒に参加してほしい」などと告げ、同日午後9時30分頃、食事をした店の近くにある、日本アムウェイ会員しか立ち入ることができない建物にAを連れて行った。

 Zは建物に入り、別の勧誘者Y(以下Y)にAを会わせた。YはAにフェイスマッサージをすすめ、Zも同調。翌日、Aは同じ建物内でZとY同席の上、マッサージを受けることになり、その日は解散することになった。マッチングアプリ経由での勧誘であることから、Zは帰宅途中にAに交際を申し込んだという。

マッサージ後に「おすすめの化粧品がある」

 翌日、ZとYはAにマッサージを行ったものの、契約締結について、アムウェイへの勧誘目的であることを2人は事前に告げていなかった。マッサージ終了後、2人はAに「今使った化粧品とかお勧めやし、教えてあげる」などと告げ、日本アムウェイの冊子をAに見せながら「このままだとお肌がボロボロになってしまう」「今買っておかないと後々後悔することになる」などと勧誘を始めたという。

photo アムウェイが販売する化粧品の一例(出典:同社公式Webサイト)

 Aは驚きながらもYに対し「でも、化粧品は決まったやつを使っている」「もうちょっとじっくり考えたい」などと伝えたところ、Zは「なんでなん」「こんなに効果があって良い商品なんやで」「絶対今買った方がいいよ」などと告げた。

Aの現状を否定→執拗に勧誘 強引に購入させる

 その後もAは勧誘を断り続けたにもかかわらず、ZとYの2人は「いや、でもね」「だからね」などとAの意見を否定するような発言をして、これを聞き入れなかった。

 Aは2人に「高いし、買えない」「いらない」と明確に告げたものの、Zは「いや、でもいいものは使うべき」「絶対Aに必要な化粧品」「ぜひ買って使って欲しい」などと告げるとともに「こんなにいいものを勧めているのになぜ分からないのか」「お金ないって言うが、何百万もするものではない」などと執拗に勧誘を継続した。

  その執拗な勧誘に徐々に恐怖を感じたAは、2人に対し「分かりました、化粧品を買う」と告げた。ZとAは、化粧品の購入手続きを進めるため、建物の1階に移動。そこでZは、Aに「アムウェイから商品を買うなら会員に入会しないといけない」「代わりにやってあげるし、スマホ貸して」などと告げ、Aのスマートフォンを借り受け、操作。会員登録と化粧品の購入手続きを完了させたという。

photo 会員登録の画面(出典:同社公式Webサイト)

 さらに、Zは「入会手続きもしたし、今から説明始める」などと言い、「今入会手続をしたのは、このアムウェイという会社のビジネス」「会員費はかかるけど、アムウェイの商品を買ってそれを売れば権利収入が発生して、みんなが得をするシステムになっている」「将来的に働かなくてよくなるので、一緒にやろう」などと告げた。

 Aは、化粧品購入のしつこい勧誘に加え、入会を承諾しなければ帰宅させてもらえないなどと考え、最終的に入会を承諾した。

photo アムウェイに執拗に勧誘した(提供:ゲッティイメージズ)

 ただ、Zの説明ではアムウェイについて十分に理解できなかったことから、AはZが手にしていた商品カタログのような冊子について「そのカタログはくれるのか」と尋ねたものの、Zはその冊子の提供を拒否したという。結果的に、契約締結までの間に、ZとYの2人は、アムウェイに関する書類を一切Aに提供しなかった。

 このケースは、マッチングアプリを使った勧誘という点が、大きな特徴だ。勧誘者の2人は男女の恋愛関係を悪用し、Aの現状をことごとく否定。精神的に追い詰め、説明なく強引に契約させた。消費者庁は(1)〜(4)全てに該当すると判断した。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.