お金が見る見る溶けていく――投資初心者がハマる「レバレッジ投信」、2022年は最悪のリターンに?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(4/4 ページ)

» 2022年10月21日 06時30分 公開
[古田拓也ITmedia]
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 日本の金融当局である金融庁や証券取引等監視委員会、そして東京証券取引所などはレバレッジ型の金融商品について注意喚起を行ったり、新NISA制度から除外するといった施策を積極的に行っている。しかし、これらはいずれも個人投資家に向けて実施されている施策であり、米SECのような業者に対する措置はそれほど表に出てこない。

 そもそも、個人投資家は証券会社のWebサイトこそ見ても、金融庁のWebサイトを目にすることは少ない。それならば、金融当局は個人投資家に注意喚起を行うのではなく、業者への周知・規制に力を入れる方が投資家保護に資するのではないかと考えられる。そもそも、証券会社の職員の多くは、レバレッジ効果のある信用取引や個別株の取引が内規で禁じられているパターンも多い。従って、証券会社の職員は一般的な会社と比較して投資経験を積みづらいという逆説的な環境に身を置いているといえ、その結果、悪意なくグレーな表記で投資を勧誘してしまうようなケースも存在すると考えられる。

 だとするならば、やはり当局の目線は個人投資家だけでなく業者に対して積極的に向けられていくべきではないだろうか。

ミスマッチを解消するには

 最後に余談だが、レバレッジ型投資信託において「一括で数千万円を運用する投資家」が愚かだと批判されているが、個人的にはレバレッジ型投資信託に限っていえば、一括で資産全額を「賭ける(「投資する」ではないことを強調しておく)」方がまだ金融リテラシーがあるとも考える。

 なぜなら、余裕資金でレバレッジ型投資信託に賭けるのはアクセルとブレーキを同時に踏むような行為であるからだ。具体的には、積立投資で2倍のレバレッジ投信を積み立てるのであれば、その分だけ毎月の積立額を増やしてレバレッジのない投資信託を積み立てれば良い。また、2倍のレバレッジ投信を20%、通常のインデックス投信を80%といったポートフォリオで運用するくらいなら、これもレバレッジのない投信の組入比率を40%にして、通常のインデックス投信の組み入れ比率を60%にするように調整すれば済むのではないだろうか。

 余裕資金でレバレッジ型投資信託を購入すると、肝であるレバレッジ効果があまり実感できないだけでなく、利用コストを無駄に払い続けている状態となる。

 このように考えると、顧客の金融リテラシーが上昇すればするほどレバレッジの効いた金融商品を長期で保有する者は少なくなっていくと推察され、短期目線の投資家が選好するようになるだろう。

 そのため、業者の特集ページは、いっそのこと開き直って「短期、ハイリスク、一発逆転?」といったブランディングを行い、回転売買を促す方式へ移行する方が顧客のミスマッチを回避できるのではないだろうか。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


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