新型コロナウイルスで多くの飲食店が廃業に追い込まれる中、前編【「なだ万」社長に聞く 「北海道フェア」を開催した3つの理由】でも書いたように、1店舗も閉めなかった日本料理の老舗「なだ万」。
後編では巻木通浩社長に、コロナ禍で、どんな対策を講じてきたのかを具体的に聞いた。
そこには、料理の味と質のブラッシュアップを図る同社独特の仕組みがある。新しい顧客を獲得するための柔軟な方策を実行できる組織力。その秘密を聞いた。
――今後、なだ万の方針としては、愚直に伝統の味を追求していくのでしょうか。それとも新しい業態の日本食店を開いていくのでしょうか?
社是として「老舗はいつも新しい」を掲げています。なだ万には、フジテレビ「料理の鉄人」の2代目「和の鉄人」である中村孝明がいました。ある時、番組内で「フォアグラ茶わん蒸し」を作って勝つことができました。これは今でも当社の人気メニューです。
カッペリーニを使った冷製のトマトスープなど、日本料理店ではあまり出てこない食材も使っています。
この源は、歴代の総料理長を中心に2カ月に1回ぐらいの割合で開催している「料理会議」にあります。全国の店舗から調理長と調理人を集め、コースやデザートなど7、8品を持ち込み、品評会をします。いろいろな意見を出し合います。
何十年も続けているのですが、新しい食材、アイデア、調理法を紹介することによって、各調理人のレベルを水平展開できることになり、なだ万として進化を続けられています。
――調理人の高いレベルを維持するには、「料理会議」の他に、どういった施策が重要ですか?
各店舗に料理を任せることが重要だと考えています。総料理長がレシピを決めて「この料理をやりなさい」と指示していては、調理人として伸びないと思うからです。
もちろん、ある店は120点、ある店は50点の店とクオリティーがばらつくリスクもあります。しかし、私たちの調理人は競争を勝ち上がった人材なので、全員が100点以上を取れるようになっています。
――料理に関しては、各店舗の調理長が権限と責任を持って運営しているということですね?
はい。その通りです。
――調理人同士の競争原理について、もう少し詳しく教えてください。
お客さまによっては毎週、来店される方もいます。すると、その都度メニューを変える必要が出てきますが、その方に満足してもらうには、調理人としての「引き出し」が必要です。
調理人は18歳で店に入って定年まで働く人もいる一方、独立する人も少なくありません。逆に言えば、なだ万を辞めた後、他のレストランで活躍できているのであれば、なだ万の調理人のレベルは悪くないのだと思います。
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