阪急はなぜ「準特急」を導入するのか、ややこしい「列車種別」:「準特急」復活(5/5 ページ)
これほど大規模ではないものの、「通勤」という言葉を列車種別につけて、通勤時間帯にのみ一部駅を通過、あるいは停車することはさまざまな私鉄で行われている。先に挙げた阪急には「通勤特急」という列車種別がある。関東の小田急電鉄には「通勤急行」という多摩線から新宿へ向かう列車がある。
20年にデビューした小田急電鉄の通勤車両「5000形」(出典:プレスリリース)
この列車はJR東日本南武線との乗換駅である登戸には停車しない。途中駅からの需要を避けるように停車駅が設定されているのだ。一方、成城学園前には停車し、通学需要には対応している。また小田急線には普段の「準急」より停車駅の少ない「通勤準急」に朝時間帯上りがあり、千代田線に乗り入れている。
「特急」「急行」などの基本的な列車種別に、「通勤」「準」「快速」「区間」などが付くことで複雑な列車種別がつくられている。それをどうつくるかは鉄道のサービスを提供する上で重要な戦略となってくるが、あまりにも細かすぎると分かりにくいというジレンマも発生する。利用者に適切な列車を提供することは沿線に定着してもらう上で重要であるものの、地元の人と鉄道ファンにしか分からないような種別は混乱を招く。
列車種別の設定には言葉のセンスも必要であり、その意味では22年冬のダイヤ改正で「準特急」を導入、将来の座席指定車両導入を見越して「準」を入れた阪急は戦略的に上手だと考えられる。
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