月面でのモバイル通信も! KDDI総研が挑む「6G時代」の夢広がるプロジェクト房野麻子の「モバイルチェック」(2/5 ページ)

» 2022年10月30日 08時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

レストランの風景、AIはどこまで理解できる?

 昨今、さまざまなAIの研究が行われているが、技術的な研究とともに非技術的な取り組みも合わせて行うことが重視されているという。

 例えば、会社の人事、採用などでAIが使われるケースが増えている。学習するデータがあればAIは動くが、この元データで男女比が偏っていると、いくら学習したとしても男性の採用が優先的に行われるといったことが起こる。こうした偏りは人種、宗教などさまざまなケースで見受けられ、偏ったデータだとAIがうまく働かない。補正をかける必要があるが、その補正も非常にバイアスがかかりやすいという。研究者が直感的にやっていいものではないのだ。

 そこで、AIをどのように使うべきか原則を定めようという動きが世界中で起こっている。KDDIとしても、AI開発・利活用の原則を定めて公開している。

 KDDI総合研究所では、「AI自体の信頼性」を担保する研究、「AIを使う上での信頼性」を保つ2つの観点で研究に取り組んでいるという。

 例えば、レストランで給仕している人と、注文している人の写真がある。この写真がレストランの注文の風景だと理解できていれば、手前の人がなぜ向かいの人を指さしているのかが分かる。しかしAIの場合、この背景が分かっていないと写真の状況が理解できない。

レストラン風景の画像から、AIが正しく状況を判断しているかを競うコンペが世界各地で行われている。

 画像処理だけではなく、人間の知識を一部使ってAIが状況を解いていくコンペが世界中で行われているという。KDDI総合研究所でも、AIがより的確に回答できる仕組みの開発に取り組んでいる。

 また、AIの基礎研究に海外の著名大学とも取り組んでいる。2020年から共同プロジェクト進めており、各大学に研究所の社員を派遣し、AIを使った無線、XR分野で基礎研究を進めている。

 レストランの写真の事例は「人間知識活用AI」の一例だが、それ以外にも、映像、音声、テキスト、センサー情報などさまざまなデータを組み合わせて総合的に判断する「マルチモーダルAI」、問題に対する学習データがなくても、過去に学んできたことをベースに処理する「再生利用可能AI」、新しい分野だと認識した上で、過去に学んだ情報から処理できる「成長可能AI」など、人間ができるようなこともAIが行えるようになることを目指して研究している。

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