月面でのモバイル通信も! KDDI総研が挑む「6G時代」の夢広がるプロジェクト房野麻子の「モバイルチェック」(1/5 ページ)

» 2022年10月30日 08時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 携帯電話会社は、次世代や未来を見据えた技術の提案やサービス拡充のために、研究所を有してさまざまな研究開発を行っている。10月中旬、KDDIの研究開発の中核となるKDDI総合研究所の先端技術研究所(埼玉県ふじみ野市)が、報道関係者向けに研究プロジェクトを紹介するイベントを開催した。Beyond 5G/6Gでの実用化を目指した、まだ研究段階のものが多かったが、実現すればユーザーがより快適になる、未来への夢が広がる技術だ。興味深いプロジェクトの一部を紹介しよう。

KDDI総合研究所がBeyond 5G/6Gでの実用化を目指したプロジェクトを公開した。画像はイメージ(ゲッティイメージズ)

リアルタイム遠隔制御に向けた無線中継方式

 Beyond 5G/6Gでは、リモート運転や遠隔医療の実用化を目指している。それらに必要なのが低遅延、大容量通信で、カバーできるエリアも広げていく必要がある。大容量で低遅延の通信にはミリ波を使いこなすことが重要だが、ミリ波は従来から使われていた周波数帯の電波よりも飛ぶ距離が短く、どうしてもエリアが狭くなる。

 そこで検討しているのが、無線中継技術によってエリアを広げることだ。もちろん、従来から中継技術は使われている。中継局の種類によって、大きく「非再生中継」と「再生中継」と呼ばれるものに分けられるが、両方にメリット、デメリットがあり、低遅延、大容量を両立するのは難しいという。

 低遅延と大容量を両立する中継技術としてKDDI総合研究所が提案している方式は、まず、中継局では極力デジタル信号処理を加えずに、アナログ回路を使って低遅延な中継を行う。また、大容量化のためには一般的に周波数多重やMIMO(空間多重)を使うが、サイズ的に端末側に搭載できるアンテナ数は限られてしまうので、端末では周波数多重、中継局から基地局間においてMIMOを使う。こうして低遅延化と大容量化を両立する。さらに、端末から中継局と、中継局から基地局までとは異なる周波数帯を使い、電波の干渉を防ぐ。

提案する中継方式を用いると、理論計算で従来の中継方式より大容量化、通信距離の延伸が実現できるという。

 理論計算結果では、端末から基地局までミリ波で直接通信した場合だと、200メートルぐらいで通信できなくなってしまうが、今回の提案方式では約4倍となる800メートルまで距離を伸ばせるようになるという。

 スライド内で中継局がドローンになっているのは、端末、中継局、基地局の間で、互いが見通せる環境にするためだ。ミリ波は遮へいに非常に弱く、樹木の葉に遮られても電波が通らない。そうした場合でも中継局が見通しの良い場所に移動できるように、ドローンのような動ける中継局を考えているという。

 この技術は2020年代後半での実用を目指している。

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