月面でのモバイル通信も! KDDI総研が挑む「6G時代」の夢広がるプロジェクト房野麻子の「モバイルチェック」(5/5 ページ)

» 2022年10月30日 08時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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月面で提供するモバイル通信サービス

 KDDIは、スペースXの衛星ブロードバンドインターネット「Starlink(スターリンク)」を使って、法人や自治体向けに「Starlink Business」を2022年内に提供すると発表した。一方、KDDI総合研究所では月面でのモバイル通信提供を目指して研究開発を行っている。2030年頃には、月面に宇宙飛行士が常駐するような時代になるとされ、それに間に合うように準備を進めているという。

 月面に着陸船が1機降りたった程度であれば、地球のアンテナと月面のアンテナを1対1で対向させればいいが、宇宙飛行士が広い地域に散らばって活動をする場合には、地球と同じようなモバイル通信ができた方が便利だ。そこで、月面にもいわゆる基地局を建てることになる。基地局を建てた上で、地球との間をしっかりした通信回線で結ぶことになるという。

 地球と月の間の通信は、地球側のアンテナを増やしたり、静止衛星を活用したりすることで当面はまかなえる。月面での活動が増えて、やり取りするデータ量が増えてくると、衛星間光通信と同じ仕組みを地球と月の間でも確保する必要性が出てくるのかもしれないという。通信回線の整備の仕方、月面での基地局の整備手法などについて検討しており、今年度もJAXAから継続研究の発注を受けられる見込みだ。

月面でのモバイル通信を実現するための取り組み

 また、月の成分に近い土壌を使って、月面での電波の反射特性を調べた。清水建設が自社の研究のために富士山の溶岩を粉砕して作った土壌を採用。電波無響室に並べて反射特性を調べたところ、コンクリートの特性と似通っており、地球の基地局設計手法がそのまま月でも使えそうだという結果を得た。

 月面や宇宙での通信に関しては、ノキアとNASAが月面でのモバイル通信を研究しており、2023年には月面用LTEシステムの実証実験が行われる予定だという。KDDIとしては2028年頃にサービス提供を目指すとしている。

 KDDI総合研究所は、符号暗号の解読コンテストで世界記録を達成していたり、画像の圧縮技術に強みを持っていたりもする。今すぐ導入され、効果を体感できるものばかりではないので見落としがちだが、こうした研究開発が、より快適なサービスへの進化、新サービス誕生につながっていくことを覚えておきたい。

筆者プロフィール:房野麻子

大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。


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