「入店お断り」ラーメン1杯を2人でシェア ルール違反なぜ起きる?コスパ重視の弊害か(2/3 ページ)

» 2022年10月29日 07時30分 公開
[濱川太一ITmedia]

――確かに機会損失など利用者側は普段、なかなか思いが及びません

東龍: 飲食店は当たり前ですが、慈善事業ではありませんよね。一席ごとに客単価が決まっています。夏であれば、クーラーをきかせる。冬であれば、乾燥しないよう加湿器を設置したり、暖房を入れたりする。机をきれいに拭(ふ)いたり、いすを設置したりするのも、全てお金がかかっていますよね。

 例えば、自分の快適な家に、急に知らない人がやってきてソファに座り、30分間テレビを見るなんて、普通は許さないですよね。来店して注文しないというのは、それと同じことになります。

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――SNSでは店の対応を支持するユーザーの声が多数見られました。注文しないのは「マナー違反」と考える人が多い印象を受けました

東龍: 利用者からすると「マナー違反」となりますが、飲食店の側から見れば「ルール違反」となります。飲食店は基本的には「お客さま商売」になり、店側からルール違反ですよ、と声を上げにくい側面があります。しかし今回は、利用者側にも「マナー違反」と感じる方が多くいらっしゃり、訴えも伝わりやすかったのではないでしょうか。

メディアが強化した「コスパ重視」の風潮

――店側と利用者側の意識のギャップを起こさないためにはどんな対策が必要でしょうか

東龍: 飲食店側からすれば、一人一品は本来、当たり前のことですが、日本の飲食店では海外に比べて、明言化されていないところが多い印象を受けます。「一人一品必ず注文してください」「召し上がらない方は外で待っていただきます」とはっきりルールを設けて提示することは大事かなと思います。

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 やはり時代も変わってきています。都内だけでも10万店以上の飲食店があり、外食産業は成熟し、情報もインターネット上にあふれ、いろいろな人が飲食店を利用しています。昔のように、知っている人だけが来店する、という時代ではないので、ルールを明確にし、ポリシーをしっかり伝えることが大切です。

――先ほどコストパフォーマンスのお話がありました。コスパ重視が盛んに叫ばれるのはなぜだと考えますか

東龍: よくいわれるように、日本人全体の所得が上がらず、そうすると、どんどん引き締めムードになります。自身もメディアの人間ですが、やはり、メディアの論調も「これは安い」「お得」といった具合に、なるべく出費を抑える方向の記事が増え、そうした雰囲気がどんどん強化されます。反対に、バブル景気のときは「もっと豪快に遊ぼう」という論調の記事が多く見られました。

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