「入店お断り」ラーメン1杯を2人でシェア ルール違反なぜ起きる?コスパ重視の弊害か(3/3 ページ)

» 2022年10月29日 07時30分 公開
[濱川太一ITmedia]
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一億総グルメ化の時代

――飲食店側が困る利用者の行動は、ほかにどのような例がありますか

東龍: 一番多いのは、料理を食べ終えてからずっと席に居座ることですね。勉強や仕事もかねて提供するカフェなどであれば問題ありませんが、通常のレストランで長時間居座れば、飲食店にとっては機会損失になります。

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――利用者が店側に過度な要求を突きつけるカスタマーハラスメントもよく耳にします

東龍: よくも悪くも、最近感じるのは、日本人の多くの方が、すごく「グルメ化」されているということです。私も仕事柄、いろいろなお店に行くのですが、従業員やシェフに向かって「ここがだめだ」と声を上げる利用者をお見かけします。

飲食店リサーチが2020年に実施した調査では、約6割の飲食店がカスハラを経験。説教や居座りなどといった被害報告が目立った(飲食店リサーチ「飲食店経営に関する調査レポート」より)

 昔であれば、利用者がシェフと関係性を築いてから店について意見することが多かったと思いますが、近年はグルメサイトなどが多数あり、情報量は昔よりはるかに多く、気軽に手に入ります。そういった事情もカスタマーハラスメントなどが増える背景にあるのではないでしょうか。

「和牛とは何か」答えられない日本人

――日本と海外の飲食店を比べて見えてくる違いはありますか

東龍: 海外ではレストランなどではルールを明言化しているところが多いです。また海外の方が、レストランは特別な空間という意識が高く、食の知識を学ばれている人も多い印象を受けます。欧米などには、チップの文化がありますよね。チップをいくら払うかという観点から、利用者が飲食店のサービスや、空間の価値、従業員の立ち居振る舞いなどに対して、注意を払うという意識が高いかもしれません。日本の場合は、飲食店が設定するサービス料が上乗せされるので、そこまで意識をする人が少ないのかもしれません。

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――飲食店と利用者の双方が気持ちよく食事を楽しめるようにするためには、どのような取り組みが必要になるのでしょうか

東龍: 飲食店側としては、ルールの明言化が必要ですね。そして、利用者の意識という観点からは、やはり国が「食育」に力を入れることは大切だと考えます。例えば、日本が世界に売り出す「和牛」。海外からおいしいと絶賛されるのに、「ところで和牛とは何ですか」と聞かれると、正確に答えられる日本人はあまりいません。こうした食育の不足が、飲食店でのルール違反などにつながる、1つの原因なのではないかと感じています。

東龍(とうりゅう)

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グルメジャーナリスト。

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ブッフェ、フレンチ、鉄板焼、ホテルグルメ、スイーツ、ワインをこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。料理コンクール審査員、講演、プロデュースも多数。


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