こうしたリスクの回避を目的に、冒頭の調査を発表したDUMSCOでは、本人が自覚していないストレスを可視化するアプリ「ANBAI」のストレス評価の一部を、任意でSlackのステータスに反映する人事制度、「(忖度なしの)HP見える化」制度の運用を実験的に開始しています。
DUMSCOの加勇田雄介氏は、個人のストレス状態を、Slackで任意表示できるシステムを実装した理由について、ストレスを自覚しづらい構造に加えて、高ストレスを自覚していない隠れテレワ負債者の特徴として、過剰適応傾向で、自らが限界であることを表明することが難しい点を挙げています。
「今回の調査では、隠れテレワ負債者の88%が、脊髄反射的に『大丈夫です』と言ってしまう点が明らかになっていますが、自戒を含めて、そうした他人の期待に敏感で、多少の無理難題にも『大丈夫です』と応えてくれる人物に、仕事を任せたくなるのが、組織の性です。その結果、会議と評価が特定の人物に集中する状態を招いていると推測されます」(加勇田氏)
こうした脊髄反射的な「大丈夫です」に惑わされることなく、会議と評価が特定の人物に集中する状態を回避するという点で、自身のコンディションを任意で公開することは、有効な選択肢の一つだと言えるでしょう。
一方で、サービスのリリース前や月末など、一時的な会議やタスクの増加が避けられない時期は、誰しも経験があると思います。
その点について、加勇田氏は「自律神経の状態が社内で公開されるようになったことで、その改善に直結する、週末の寝溜めが少なくなり、一時的に会議が増加する時期も高ストレスになりづらくなった」と話します。
ストレスと睡眠は密接に関係し、特に平日と休日の睡眠リズムが乖離(かいり)しすぎると「ソーシャルジェットラグ」、つまり時差ぼけのような状態に陥る点は、前回の記事で指摘しました。
また、筆者がプロジェクトメンバーを務め、生活習慣や睡眠のセルフケアを行うストレスチェックや、睡眠改善プログラムを提供するこどもみらいの調査では、テレワークでも、良い睡眠を保ち、睡眠リズムを維持すること、特に、朝に光を浴びる、夜はしっかり暗くする、もともとの睡眠時間帯をずらさず、夜更かしをしないことが生産性を維持するために重要であることが明らかになっています。
テレワークでは一度も家から出ずに引きこもりがちになってしまい、太陽の光を十分に浴びられなかったり、夜遅くまでPC作業をしてしまったりすることが稀(まれ)ではありません。
健康的なテレワークを推進するためには、食事や光をうまく使って生活リズムを維持し、リモート会議の時間を適切に設計し、そして自らの状態の「可視化」をすることで無理なく仕事をしていくことが、重要なポイントです。
ぜひテレワークのストレス軽減効果を生かしつつ、生産性を維持するために、取り入れられる施策を検討していきましょう。
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