さて、プールの紹介が長くなってしまったが、カプセルホテルの話に戻す。FRPの素材を使ってボートが売れている、プールもシェアが高いとなれば、「アレもFRPにしよ」「コレもFRPにするぜ」といった具合に、世の中に眠っている“お宝”を探したくなるものだが、ヤマハは行動に移さなかった。
自社製品のためにFRPの技術を使う――。門外不出のような感じで、新たな取り組みに消極的だったのだ。しかし、である。カプセルユニットをつくったということは、この市場に打って出ることを考えているのかもしれない。ちょっと調べたところ、カプセルホテル市場は伸びていて、2027年までに3億8003万米ドルに達するレポートもあるほど(Report Ocean調べ)。
「21年から27年の間に、市場は8.2%以上伸びると予測している」(Report Ocean)ので、このような数字を目の前にすると、かつてボートの底をひっくり返してプールをつくったように、市場をひっくり返すようなことを企んでいるのかもしれない。
カプセルユニットの開発に携わった青沼克弥さんに聞いたところ、次のような答えが返ってきた。「FRPを使って新たな市場に打って出るといったことは、いまのところ考えていません。社会課題を解決するために取り組んでいまして、第一弾として、歩道橋の床版にFRPの技術を採用していただきました。今回のカプセルユニットはその流れの一環として取り組んだものでして、これからもFRPを使って社会課題を解決することができればなあと思っています」と。
FRPの技術を携えて、新しい市場というプールに飛び込むのか。それともカプセルにフタをするような感じで、門外不出のスタンスを貫くのか。考えれば考えるほど、プールにハマって……ではなく、ループにハマってしまう。ヤマハがどちらの道を選ぶのか、それが分かるのはもうしばらく先になりそうだ。
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