昨今、携帯電話業界では衛星通信に対する注目が非常に高まっている。次世代通信規格「5G」の次にあたる「Beyond 5G」や「6G」では、地上だけでなく、空や海、宇宙といった場所でも通信できるようにする「超カバレッジ」を目指している。その研究が進んでいるという背景もあるが、iPhone14シリーズが衛星経由の緊急SOS機能を導入したことも大きかった。
しかし、衛星とスマートフォンとの直接通信は、まだ進化途上の技術だ。iPhoneの緊急SOSのアプリ画面にはメッセージを送ると時間がかかるとの表示がある。送れるデータは非常に小さく、あくまで緊急時に使うものだ。より大容量のデータ通信が可能な“使える”衛星通信としては、米起業家イーロン・マスク氏が率いるスペースX社の「Starlink」(スターリンク)が、ウクライナにも提供されたことでよく知られている(関連記事)。
日本ではKDDIがStarlinkをau基地局のバックホール回線に利用しようとしている。また、Starlinkを国内の法人企業や自治体に提供する契約も締結し、10月12日に発表会を行った。
Starlinkは低軌道の通信衛星を使って提供されるブロードバンドインターネットサービスだ。高度550キロメートルの低軌道上に多数の通信衛星を配置している。従来の静止軌道衛星が赤道上空約3万6000キロメートル上空にあることに比べると、地表からの距離が65分の1程度と近く、大幅な低遅延と高速通信を実現する。低軌道の衛星を使うことで低遅延、大容量化するというコンセプトは昔からあったものの、それらは長らく課題とされてきた。「そこの技術をブレイクスルーしたのがスペースX社のStarlinkだ」とKDDIの松田浩路・経営戦略本部長兼事業創造本部長は評価する。
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