スマホと衛星の直接通信に期待 マスク氏の「Starlink」、日本でも年内サービス開始へ房野麻子の「モバイルチェック」(1/3 ページ)

» 2022年11月08日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 昨今、携帯電話業界では衛星通信に対する注目が非常に高まっている。次世代通信規格「5G」の次にあたる「Beyond 5G」や「6G」では、地上だけでなく、空や海、宇宙といった場所でも通信できるようにする「超カバレッジ」を目指している。その研究が進んでいるという背景もあるが、iPhone14シリーズが衛星経由の緊急SOS機能を導入したことも大きかった。

iPhone14シリーズは現時点ではアメリカとカナダ限定だが、衛星経由で緊急SOSを送信できる。山中など携帯電話やWi-Fiの圏外になっている場所でも緊急通報サービスにメッセージを送ることができる

 しかし、衛星とスマートフォンとの直接通信は、まだ進化途上の技術だ。iPhoneの緊急SOSのアプリ画面にはメッセージを送ると時間がかかるとの表示がある。送れるデータは非常に小さく、あくまで緊急時に使うものだ。より大容量のデータ通信が可能な“使える”衛星通信としては、米起業家イーロン・マスク氏が率いるスペースX社の「Starlink」(スターリンク)が、ウクライナにも提供されたことでよく知られている(関連記事)。

 日本ではKDDIがStarlinkをau基地局のバックホール回線に利用しようとしている。また、Starlinkを国内の法人企業や自治体に提供する契約も締結し、10月12日に発表会を行った。

StarlinkのWebサイト。日本で個人向けサービスは10月11日から提供を開始している

大幅な低遅延と高速通信を実現するStarlink

 Starlinkは低軌道の通信衛星を使って提供されるブロードバンドインターネットサービスだ。高度550キロメートルの低軌道上に多数の通信衛星を配置している。従来の静止軌道衛星が赤道上空約3万6000キロメートル上空にあることに比べると、地表からの距離が65分の1程度と近く、大幅な低遅延と高速通信を実現する。低軌道の衛星を使うことで低遅延、大容量化するというコンセプトは昔からあったものの、それらは長らく課題とされてきた。「そこの技術をブレイクスルーしたのがスペースX社のStarlinkだ」とKDDIの松田浩路・経営戦略本部長兼事業創造本部長は評価する。

地表からの距離が静止軌道衛星の約65分の1で低遅延、大容量通信を実現する
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