ツイッター3700人、メタ1.1万人 海外IT企業で進む人員整理 国内エンジニアバブルへの影響は?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2022年11月11日 06時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 米国を中心に超大手テック企業が相次いで人員整理に追われているということは、当然ニュースになっていないテック企業でも、今後幅広く人員整理が行われていくことが想定される。とりわけ、21年までは非常に需要も旺盛で、賃金や報酬単価が青天井となっていたエンジニア関連の職種領域では、あぶれた人材が今後、一気に市場にあふれてしまうことになる。

 そんな状況で今後考えられる現象が、人件費における単価水準の下落と、労働者同士の競争である。東京ハローワークが毎月公表している「職種別有効求人・求職状況(一般常用)」によれば、エンジニア職に相当する「情報処理・通信技術者」は、22年9月時点で都内1万7227件の有効求人に対し、5899人の有効求職者がいる状況だ。有効求人倍率は2.92倍にものぼる。一般に、有効求人倍率が「1」を上回ると、求職者よりも求人が多くなるため、求職者側に有利な「売り手市場」となる。

 「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率は、上述したように、22年9月時点で2.92倍。5年前の同時期に毎月4000人程度であった有効求人者数が、生産年齢人口の下落にもかかわらず足元で6000人近くまで増加しており、今では全専門的職業の中でもトップの求人シェアを誇るようになっている点に注目したい。

 GoogleTrendsの検索データを確認すると、「エンジニア 未経験」というキーワードの検索ボリュームは16年から一貫して上昇しており、足元では最大となっている反面、例えば「製造業 未経験」や「建設業 未経験」といった検索ワードはそのボリュームと比較すると無視できるほど小さい。

photo 売り手市場でエンジニアバブル?

 実際にやってみると分かるが、Googleで「エンジニア 未経験」と検索すると「未経験でも年収500万円が可能」といった広告やインフルエンサーの体験談がヒットする。国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の年間平均給与は433万円である。未経験でいきなり国民の平均以上の金額が稼げてしまうのであれば、夢のような話だ。他業種と比較して、エンジニアがこれほど「未経験」とセットで検索される背景には、こうした“ITドリーム”的な事情も大いにあることだろう。しかし、裏を返すと高待遇を構成しているのは本人の技量ではなく、労働市場の逼迫(ひっぱく)という外的要因であることを強調したい。

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