「休職期間中に勝手に副業」がバレた社員 懲戒処分になるのかポイントは“背信性”(2/2 ページ)

» 2022年11月14日 05時00分 公開
[人事労務実務のQ&A]
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無許可の副業(兼業)に対する懲戒の可否

 私傷病休職期間中は療養専念義務を負うにもかかわらず、労働者が無許可で副業をしていた場合、使用者は当該労働者を懲戒することができるでしょうか。

 使用者が、就業規則により無許可の副業を禁止し、その違反を懲戒事由と定めている場合、無許可の副業は懲戒事由に該当します。しかしながら、本来、所定労働時間以外の時間をどう過ごすかは労働者の自由です。

 そこで、裁判例・学説上、無許可の副業を懲戒事由と定める就業規則の規定は、(1)本務の労務提供に悪影響を及ぼすような内容(長時間、多数頻度など)である場合、(2)競業他社での副業等使用者の利益を害する場合、(3)使用者の名誉・社会的信用を害する場合など、使用者に対する一定程度の背信性が認められる副業のみを懲戒することができるとの趣旨であると限定解釈されることが一般的です。

本設問における懲戒の可否

 私傷病期間中は療養専念義務を負うことに鑑みれば、所定労働時間外(土日)とはいえ、労働者が無許可で副業をすることは、使用者に対する一定の背信性を有する行為であると考えられます。

 よって、私傷病休職に至った経緯、副業の内容、当該労働者の療養に与える影響などの諸事情を考慮して、当該副業には会社に対する一定の背信性が認められないという例外的な場合以外は、就業規則の規定に従い、当該労働者を懲戒することができると考えます。

 もっとも、懲戒処分の重さについては、(1)当該懲戒処分が対象行為の内容に照らして均衡がとれているか、(2)同種の行為に対する先例に比して均衡がとれているかなどの事情を考慮して、慎重に決定すべきです。

 また、本人に弁明の機会を付与するなど、適正な手続きを踏むことも忘れてはなりません。

著者プロフィール

盛太輔(もり・だいすけ)弁護士

1997年中央大学法学部卒業。2002年司法試験合格。2004年司法修習終了(57期)、弁護士登録(第一東京弁護士会)、石嵜信憲法律事務所入所。2015年1月パートナー就任

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