なぜ? 任天堂に日本郵船――投資の神様・バフェットが否定的な「株式分割」に大企業が乗り出す理由古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/4 ページ)

» 2022年11月18日 06時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 今回の告知では、ユニクロ運営会社のファーストリテイリングや、ディズニーランド運営会社のオリエンタルランド、Vtuber事務所運営会社のANYCOLORなど38社が名指しで投資単位が高い水準にとどまっている上場会社としてリスト化されており、これらの会社は対応を余儀なくされそうだ。

JPXが名指しした会社リスト(出所:同社公式Webサイト)

 岸田政権の肝いり政策である「資産所得倍増プラン」を実現するために国民が広く投資できる環境を作ることはメリットが大きい。22年に株式分割が相次いだ背景には、こうした取引所や政府による根強い要請があったことにあると考えられる。実際に、投資が可能になる個人投資家が増加した影響か、多くの企業にとって株式分割は株価を値上がりさせた。ここまで聞くと株式分割は、発行体にとっては株価の値上がりが期待でき、個人投資家にとってはこれまで手に届かなかった企業の株主となれることから夢の制度にも思われる。

 仮に株式分割がメリットばかりなのであれば、なぜ全ての会社が株式分割を行っていないのだろうか。その理由として、株式分割には「意味がない」とする立場も根強く存在することが挙げられる。

「投資の神様」バフェットは否定的

 米国の投資会社であるバークシャーハサウェイのCEOで「投資の神様」の異名を持つウォーレン・バフェット氏は株式分割に否定的な立場を有するとして有名だ。

 ニューヨーク証券取引所に上場している同社のクラスA株式の株価は、1株当たりおよそ46万5000ドル(11月16日時点)、日本円にしておよそ6500万円と大変な高額だ(ちなみに、米国は日本のような100株1単位の単現株制度は採用しておらず、1株から投資することが可能で、議決権が制限されるB株式は300ドル程度で入手可能だ)。

 なぜ、バフェット氏が株式分割に否定的であるかというと、株式分割は業績を改善するものではなく、本質的な企業価値を高める施策ではないからだ。

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