自治体DX最前線

豊橋鉄道×豊橋市×テクテクライフ、スタンプラリーのDXで観光力アップ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/7 ページ)

» 2022年11月19日 07時26分 公開
[杉山淳一ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6|7       

 MaaSの思想を例えるなら「塩と胡椒を毎日使うなら、塩胡椒という瓶が1つあればテーブルがスッキリ」となるはず。しかし、「やっぱり塩だけ、胡椒だけの瓶も必要だよね」となり、2つの小瓶を1つにまとめようとしたのに3つに増えちゃった。これが日本版MaaSの現状だ。必要なものになるはずが、あってもなくてもいいものになっている。だから流行らない。

豊橋市の公共交通(出典:豊橋市、豊橋市公共交通マップ

 豊橋市内に限定するなら、バス事業者は豊鉄バスだけ。鉄道は豊橋鉄道の路面電車と渥美線の11駅。JR東海の在来線で4駅だ。東海道新幹線と名鉄は豊橋駅だけだから対象から外すとして、あとはタクシーを巻き込めばヘルシンキ並みのMaaSになる。市民向けの月額サブスクと旅行者向けのゾーンチケットを実装すれば理想のMaaSが完成する。「塩」も「胡椒」も「塩胡椒」もいらない。ましてや「アジ塩胡椒」もいらない。ドラえもんに出てきた、なんでもおいしくする万能調味料「味のもとのもと」を目指してほしい。

 そして今回、テクテクライフの役割は「フリーきっぷからMaaSへの橋渡し役」になった。今後は「MaaSに楽しさを提供する」となるだろう。実用的なMaaSにゲーム的な楽しさが加わる。それこそが日本的なMaaSだと思う。

スタンプラリー期間中は月に1度「ベテラン運転士 今泉さん」のトークイベントを開催する。10月のイベント会場はブラックサンダーのラッピング車両だった。チョコレート菓子「ブラックサンダー」の工場が豊橋にある

(取材級力/豊橋鉄道)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


前のページへ 1|2|3|4|5|6|7       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.